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特集 ミエリン化の機構とその異常
脳の髄鞘形成開始におけるアストロサイトの関与
著者: 丹-竹内京子1 中原仁1 相磯貞和1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部解剖学教室
ページ範囲:P.162 - P.166
文献購入ページに移動グリア細胞の中で神経細胞と直接に接触しているのはオリゴデンドロサイトとアストロサイトである。オリゴデンドロサイトの突起は神経細胞の軸索にとりまき髄鞘を形成する。この髄鞘は神経線維の絶縁体としての役割と神経線維の跳躍伝導における役割の二つの意義を有する。一方,アストロサイトは血管と神経細胞の間に介在し,栄養やその他の物質を血管から神経細胞に,あるいは神経細胞の代謝産物を血管に輸送していると推測されている。髄鞘形成のメカニズムについては,神経細胞の軸索とオリゴデンドロサイトとの直接的な関わりあいを中心とした研究が今までに多くなされてきている。しかしながら,培養系において,オリゴデンドロサイトの突起が神経細胞の軸索に接着するためにはアストロサイトとの共培養が必要であることが報告されている1)。また,生体においても髄鞘化にアストロサイトが関与する可能性があることが報告されている2-4)。さらには化学脱髄後にアストロサイトを導入することによって髄鞘の再生が促進されたという報告もあり5),髄鞘形成にアストロサイトが重要な役割を担っている可能性が示唆される。
本稿では,大脳新皮質の正常発生過程において,アストロサイトが髄鞘形成前のオリゴデンドロサイトにどのような関わりを持っているのかについて,われわれのこれまでの研究成果を中心に概説する。
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