特集 ミエリン化の機構とその異常
パラノーダルジャンクションにおける軸索・グリア相互作用
著者:
馬場広子1
星登美子1
鈴木彩佳1
所属機関:
1東京薬科大学薬学部機能形態学教室
ページ範囲:P.178 - P.183
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神経細胞の出力系としてはたらく軸索は,周囲がミエリンによって覆われた有髄神経軸索と,覆われていない無髄神経軸索に分けられる。ミエリンは,中枢神経系ではオリゴデンドロサイト,末梢神経系ではシュワン細胞によって形成される膜様構造物である。脂質に富み,絶縁体としてはたらくため,興奮は跳躍伝導によってすばやく有髄神経軸索内を伝導する。近年,ミエリンの重要なはたらきの一つとして,軸索の機能的ドメインの形成が知られるようになった1-3)(図1)。有髄神経軸索はミエリンが取り巻くことによって,ランビエ絞輪,パラノード,ジャクスタパラノード,インターノードといったそれぞれに特徴的な形態をもつ四つのドメインに分けられる。これらの各ドメインは,イオンチャネルや接着分子などの膜タンパク質が部位特異的に集積することによって,形態的のみならず機能的にも異なっている。このうちランビエ絞輪には活動電位発生に関わる電位依存性Na+チャネル,ジャクスタパラノードには電位依存性K+チャネルがそれぞれ集積している。この二つのチャネルを隔てるパラノード部分には,軸索とミエリンの間につくられたパラノーダルジャンクション(PJ)と呼ばれる細胞間結合が存在する。近年このPJの形成と軸索上の機能ドメインの維持との関連性がわかってきた。本稿では,PJの形成およびはたらきについて概説する。