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文献詳細

雑誌文献

生体の科学57巻4号

2006年08月発行

文献概要

特集 脳科学が求める先端技術

2光子顕微鏡

著者: 河西春郎1

所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター生物物理学分野

ページ範囲:P.266 - P.272

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 2光子顕微鏡はフェムト秒超短パルスレーザーの実用化に伴い1990年に実現し,すでに16年の歴史を持つ。しかし,この間のフェムト秒レーザー技術の進歩は緩慢であった。価格は依然として高価であり,顕微鏡の光源としても使いにくい。2光子顕微鏡の特許は米国では2009年まで,日本・ヨーロッパでは2010年まで有効であり,企業も本格的な取り組みがしにくかった。これらの事情から,2光子顕微鏡の実用はほかの顕微鏡法に比べて進んでおらず,この顕微鏡法に対する理解も良好とはいえない。それでも,多くの研究室・機関がこの技術の導入を図ろうとしているのは,この方法で得られた結果が支持を得ているからだと思われる。実際,脳科学のある部分の研究は今後この顕微鏡なしには考えられない。

 私の研究室では1996年からこの技術の導入を図った。2光子励起の原理(図1)にのみ頼って顕微鏡を構築し,その可能性を検討してきた。そうしていえるのは,われわれがこの顕微鏡についてわかっていると感じていることは,2光子励起という非日常的な非線形現象を実験により経験し,その世界に慣れたためであり,その理屈を理解したからではない。2光子顕微鏡の有効性は,実際にそれを試してみたときほかに重畳する様々の現象との相克において現れるのであり,経験則である。従って,2光子励起について書かれたものを読んでも,美しい図を見ても,その事態を短期間で直感的に理解するのは難しかろう。本稿では,顕微鏡の説明は経験に訴えかける形で最小限に止め,今後2光子顕微鏡の導入を検討される方や,この顕微鏡を用いた研究を評価される方が,気にされるだろう質問に答えるという形で解説を進めたい。この方法論には顕微鏡の専門家が書いたすぐれた解説があり,最近の展開や光学系1,2)そして歴史も知ることができる3)

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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