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文献詳細

雑誌文献

生体の科学57巻5号

2006年10月発行

文献概要

特集 生物進化の分子マップ 1.ゲノム

遺伝子レパートリーの進化―脳・神経系の進化過程

著者: 五條堀孝1 野田彰子1

所属機関: 1国立遺伝学研究所生命情報・DDBJ研究センター

ページ範囲:P.344 - P.346

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 1995年に,Haemophilus influenzaeの完全ゲノム配列が生物として初めて解読決定されてから現在まで,実に350種以上の生物の完全ゲノム配列が決定され,また大規模な完全長cDNA配列決定プロジェクトがヒトやマウスで進行している1)。このような完全ゲノム配列を用いた研究は,これまで遺伝子レベルで行われてきた分子進化の研究をさらに進めて,個々の生物の特徴と系統進化を浮き彫りにするだけでなく,一つの遺伝子の進化を見るだけではわからなかったような,生物のもつ多種多様なシステムの起源とその進化過程の検証を可能にしていくものと思われる。このような検証を可能とする完全ゲノムを利用したアプローチには,大きく二つの視点が考えられる。一つは,遺伝子の並び方などゲノム構造を生物種間で比較することで,ゲノムのダイナミックな進化をみるという視点である。もう一つは,ゲノムに含まれる全遺伝子セットの生物種間比較から,生物がもっている遺伝子のレパートリーがどのように変化してきたかを見るという視点である。前者の視点は,すでにいくつかの報告例も出てきているが,後者の視点ではまだ殆ど手つかずの状態になっている。そこで本稿では,後者の視点である全遺伝子セットに注目し,生体システムとしては難解ではあるものの非常に興味深い脳・神経系の進化過程を調べたわれわれの最新の研究を一例として紹介する。

参考文献

1)Genome Information Broker(http://gib.genes.nig.ac.jp/)2006年6月15日現在
2:0856-0875, 2004
1:33, 2005
365:130-136, 2006
5)Ensembl at the Wellcome Trust Sanger Institute(http://www.ensembl.org/info/data/download.html)
6)The genome division of the GenBank database at the National Center for Biotechnology Information(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/genomes/)
392:917-920, 1998
98:2497-2502, 2001
298:2157-2166, 2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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