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特集 生物進化の分子マップ 2.分子系統樹
収斂進化と分子系統樹の多次元ベクトル空間表現法
著者: 北添康弘1
所属機関: 1高知大学医学部医学情報センター
ページ範囲:P.352 - P.354
文献購入ページに移動 われわれの研究分野の目的は,特定の核酸(またはアミノ酸)配列から,現存する生物種の進化機構を明らかにすることである。その発端はKimura1)の“中立説”の提唱にあり,核酸の置換の大部分はその生命種の機能に直接関係ないというものであった。しかも,このような置換が確立事象として認識されるに至り,進化の様子が統計的手法を用いて解析可能となった。確立過程が放射性同位元素の物理学的事象ように,あらゆる生物種の最も基本的要素である遺伝子レベルで起きているということは,地球上の生命体の進化機構の本質を解明する上で,大変興味深いことである。
分子系統樹の構築は,哺乳類のような生物種間の系統関係とHIVのように生物種内のそれとの二つに大別される。前者では二つの遺伝子配列の間の相違数が大きく,one site当たりの多重置換も無視できないため,統計的解析を用いた最適化が要求される。後者では相違数も多重置換数も小さいため,前者より厳密な解析が可能であり,理想的には系統樹の各分岐点の配列を一義的に決める完全解が要求される。前者の代表的な解析法として“最尤法”2)があり,後者では“最大節約法”3)がある。
分子系統樹の構築は,哺乳類のような生物種間の系統関係とHIVのように生物種内のそれとの二つに大別される。前者では二つの遺伝子配列の間の相違数が大きく,one site当たりの多重置換も無視できないため,統計的解析を用いた最適化が要求される。後者では相違数も多重置換数も小さいため,前者より厳密な解析が可能であり,理想的には系統樹の各分岐点の配列を一義的に決める完全解が要求される。前者の代表的な解析法として“最尤法”2)があり,後者では“最大節約法”3)がある。
参考文献
217:624, 1968
2)Adachi J, Hasegawa M:MOLPHY:Programs for Molecular Phylogenetics, ver 2.3. Institute of Statistical Mathematics, Tokyo, 1996
Phylogenetic Analysis Using Parsimony. ver 4.0b10, Sinauer Associates, 2002
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