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特集 生物進化の分子マップ 3.生物の起源
生物の共通の祖先細胞の起源
著者: 山岸明彦1
所属機関: 1東京薬科大学生命科学部細胞機能学講座
ページ範囲:P.356 - P.357
文献購入ページに移動 遺伝子の配列をもとに作成された分子進化系統樹から,全生物の進化系統樹が作成された。図1はWoeseが作成した全生物の進化系統樹である1)。Woeseは,小サブユニットrRNA遺伝子の配列をもとに全生物の系統関係を解析して,無根系統樹を作成した。京都大学の岩部らとドイツのGogartenらは,全生物の分岐以前に機能分化したと推定されるファミリータンパク質を利用して根の位置を決定した2,3)。Woeseは,自分のrRNA無根系統樹にその根の位置を採用して有根系統樹を作成した。それが図1である。
この系統樹に基づくならば,全生物は「全生物の共通の祖先(コモノート)」で二つにわかれ,一方は真正細菌に,もう一方は真核生物と古細菌になったことになる。もし,いま根本に近い生物の性質から全生物の共通の祖先の性質を推定すると,全生物の共通の祖先は現存する原核生物に類似した生物であろうと推定される。すなわち,おそらく1μm程度の大きさの細胞からなる単細胞生物であって,細胞内に複雑な内膜系はもたない。1~2Mbp程度の2本鎖環状DNAをゲノムとしてもち,DNA複製,転写翻訳など遺伝の仕組みの基本的なメカニズムはすでにもっていた4,5),かなりできあがった生物であったことになる。
この系統樹に基づくならば,全生物は「全生物の共通の祖先(コモノート)」で二つにわかれ,一方は真正細菌に,もう一方は真核生物と古細菌になったことになる。もし,いま根本に近い生物の性質から全生物の共通の祖先の性質を推定すると,全生物の共通の祖先は現存する原核生物に類似した生物であろうと推定される。すなわち,おそらく1μm程度の大きさの細胞からなる単細胞生物であって,細胞内に複雑な内膜系はもたない。1~2Mbp程度の2本鎖環状DNAをゲノムとしてもち,DNA複製,転写翻訳など遺伝の仕組みの基本的なメカニズムはすでにもっていた4,5),かなりできあがった生物であったことになる。
参考文献
87:4576-4579, 1990
86:9355-9359, 1989
86:6661-6665, 1989
4)山岸明彦:古細菌の生物学,古賀洋介・亀倉正博(編),pp 16-39,東京大学出版会,東京,1998
5)Yamagishi A et al:Thermophiles, The keys to molecular evolution and the origin of life? Wiegel J, Adams MWW(eds), pp 287-295, Taylor & Francis Ltd., London, 1998
95:6854-6859, 1998
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10)山岸明彦:シリーズ進化学,第3巻―化学進化・細胞進化,石川統(編),pp 9-54,東京,岩波書店,2004
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