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特集 生物進化の分子マップ 4.遺伝子
BodyMap-Xsとは―それが目指すもの
著者: 小笠原理1
所属機関: 1国立遺伝学研究所生命情報・DDBJ研究センター
ページ範囲:P.364 - P.365
文献購入ページに移動遺伝子発現の進化の研究においても,マイクロアレイによる測定データが使われることが多いが,これには進化学的な解析を行う上で厳しい限界がある。1種類のマイクロアレイを用いて2生物種の遺伝子発現プロファイルを比較する場合,たとえばヒト用のマイクロアレイであるGeneChip HG-U95Aをチンパンジーに適用する場合,HG-U95Aのプローブ配列とチンパンジーのmRNA配列が違えば正しく測定できないので,そのようなプローブを解析からはずす(マスクする)必要がある。オーソログの対応がついており,かつ,プローブがヒト,チンパンジーとも一つの遺伝子にしかマッチしないという条件も加えると,測定可能な遺伝子の数はヒトとチンパンジーの間ですら,測定可能な遺伝子のうちの約56%(未発表データ)にまで減ってしまう。より遠い生物種間の比較はさらに困難である。他方,2種間の発現量を比較するために,それぞれの生物種のために設計された2種類のマイクロアレイを使う論文も発表されているが,一般にシグナル強度はプローブ配列に依存するので,異なるマイクロアレイのシグナル強度の比較は一般に非常に困難である。SAGE(Serial Analysis of Gene Expression)法を使えばこのような問題は大方なくなるが,一方で,SAGE法はタグ配列が短いため遺伝子とタグとの間の対応がはっきりしない場合が非常に多い(一意的に測定可能な遺伝子はヒトUniGene#191クラスタ54,576個のうちのわずか19.3%)という問題がある。
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