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特集 生物進化の分子マップ 6.核
転写調節・遺伝子制御ネットワークの進化―Hoxシグナル伝達系
著者: 田中博1 荻島創一1
所属機関: 1東京医科歯科大学大学院疾患生命科学研究部システム情報生物学
ページ範囲:P.378 - P.379
文献購入ページに移動遺伝子制御ネットワークやシグナル伝達系などの急速な研究の進展にともない,近年の生命科学は,個々の遺伝子を扱う視座から「生命をシステムとして理解する」視点へと移行しつつある。この視点は,個々の分子的ネットワークだけでなく,より深く生命自身の体制的なあり方に適用できるもので,原核生物-真核生物-多細胞生物という生命の体制的進化も,前段階の体制を構成要素として「入れ子」構造的な包摂化により高次な体制へ階層的に進化する過程としてみることができる。
このような基本的枠組みにあって分子進化の諸概念もシステム生命科学の観点から書き換える必要があろう。すなわち,これまでの個々の遺伝子単位の変異とそれに基づく中立あるいは選択的進化の枠組みではなくて,遺伝子群が相互結合して共同して一定の生命機能を担う生命分子のネットワークを基本単位として,その複雑化の過程として生命進化を見る,いわば「システム進化」的な立場である。個々の遺伝子の変異は自由ではなくシステム的な拘束のもとにおかれる。また,変異の選択も個々の遺伝子の機能ではなく,ネットワーク全体の機能への寄与から選択される。またネットワークの複雑化といっても,生命分子ネットワークは一旦形成されたら進化を断絶させて再構築することはできないため,その進化は既存のネットワークを「入れ子」的に含みつつ高次体制化する形で実行される。「システム進化生物学」的な見方は,これまでの遺伝子単位の分子進化理論に比べ,生物の表現形ともより密接であり,これまでの分子レベルと形態レベルの進化の間隙を埋めるものとして期待される。
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