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特集 生物進化の分子マップ 9.細胞接着
カドヘリンの分子進化
著者: 八木健1
所属機関: 1大阪大学大学院生命機能研究科時空生物学
ページ範囲:P.396 - P.398
文献購入ページに移動 単細胞生物が多細胞生物に進化する過程には,細胞が一塊に集まること,細胞と細胞との相互作用が生まれることが必要である。多細胞動物において,細胞が単一でなく凝集するのは細胞膜に存在する細胞接着分子によるものである。カドヘリンは,細胞外カルシウム依存的に細胞集合を引き起こす分子であり,発現しているカドヘリンの種類の違いにより細胞凝集の選択性が異なる。カドヘリンは細胞外領域にカドヘリンドメイン(保存されたカドヘリンモチーフ[LDRE,DXNDN]をもつ)が繰り返されたタンパク質であり,このカドヘリンドメインをもつ分子群を現在,カドヘリンスーパーファミリーと表現している1,2)。このカドヘリンドメインをもつ分子群は細胞接着に関わる機能をもつことが予想されることより,長い間,多細胞動物に特徴的な分子群であると考えられていた。しかし,多細胞動物に最も近縁な単細胞動物である立襟鞭毛虫(Monosiga brevicollis )において,カドヘリンドメインをもつ遺伝子が2種類発見された。この遺伝子はカドヘリンドメインの配列より,カドヘリンスーパーファミリーにおけるプロトカドヘリンに類似したものであった。このことから単細胞動物が多細胞動物に進化するのに先行してカドヘリンドメインの分子進化がおこっていることが明らかとなった3)。
また,タンパク質構造によりカドヘリンドメインの由来を見て行くと,単細胞生物である分裂酵母においてもカドヘリンドメインの基本構造(約110アミノ酸のβサンドイッチ構造をもつGreek-keyフォールディング)に類似したタンパク質構造が細胞膜糖タンパク質(Axl2p)に認められた4)。興味深いことに,Axl2pは分裂酵母発芽において細胞極性に関わり,多細胞動物におけるカドヘリン機能に類似している5)。多細胞動物で細胞認識・接着に用いられる遺伝子が単細胞生物において先行して分子進化していたことは,形質の進化と分子進化との関連性を考える上で興味深く,カドヘリンの分子進化は,単細胞生物が多細胞動物へ進化する上で重要な役割を担った可能性がある。
また,タンパク質構造によりカドヘリンドメインの由来を見て行くと,単細胞生物である分裂酵母においてもカドヘリンドメインの基本構造(約110アミノ酸のβサンドイッチ構造をもつGreek-keyフォールディング)に類似したタンパク質構造が細胞膜糖タンパク質(Axl2p)に認められた4)。興味深いことに,Axl2pは分裂酵母発芽において細胞極性に関わり,多細胞動物におけるカドヘリン機能に類似している5)。多細胞動物で細胞認識・接着に用いられる遺伝子が単細胞生物において先行して分子進化していたことは,形質の進化と分子進化との関連性を考える上で興味深く,カドヘリンの分子進化は,単細胞生物が多細胞動物へ進化する上で重要な役割を担った可能性がある。
参考文献
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