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文献詳細

雑誌文献

生体の科学57巻5号

2006年10月発行

文献概要

特集 生物進化の分子マップ 10.細胞骨格

WASPファミリーの分子進化

著者: 末次志郎1

所属機関: 1東京大学医科学研究所腫瘍分子医学

ページ範囲:P.402 - P.403

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 WASP/WAVEファミリータンパク質は哺乳動物ではN-WASP1),WASP2)およびWAVE1-33,4)(SCARとも呼ばれる)の五つのタンパク質からなる。このタンパク質ファミリーはWASP,N-WASPからなるWASPサブファミリーとWAVE1,WAVE2,WAVE3からなるWAVEサブファミリーの二つのグループに分けられる。共通する特徴はC端部にVCAドメインを,中央部にプロリンに富むプロリンリッチ領域をもつことである5)。VCA領域はアクチン重合を開始するタンパク質複合体であるArp2/3複合体の活性化に重要である。プロリンリッチ領域はプロフィリンに結合しアクチン重合を促進する機能に加え6,7),特にSH3ドメインをもつアダプタータンパク質との結合を通して,様々な制御シグナルを受け取る機能をもっている。プロリンリッチ領域のN端側の領域は,リン脂質や低分子量Gタンパク質による制御シグナルを受け取ることに重要な機能をもっていると考えられている5)。WASP/WAVEファミリータンパク質は様々な制御シグナルを受け取り,Arp2/3複合体を活性化する,いわば細胞内シグナル伝達をアクチン重合へと仲介するシグナルの仲介タンパク質であると考えられる。

 図1に酵母,アメーバ,線虫,ショウジョウバエ,ヒト,アラビドプシスのWASP/WAVEファミリータンパク質の系統樹を示す。しかしながら,酵母にはWASPサブファミリーはあるがWAVEサブファミリーは見つかっていない。アラビドプシスのWAVEサブファミリーはほかの種のものとは大きく異なっていて8),WASPサブファミリーに属するタンパク質は今のところ見つかっていない。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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