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特集 生物進化の分子マップ 11.酵素
ジヒドロピリミジナーゼ(DHP)とDHP関連タンパク質群(DRPs)の分子進化
著者: 竹本忠司1 木村博1
所属機関: 1滋賀医科大学生化学・分子生物学講座分子遺伝医学
ページ範囲:P.408 - P.409
文献購入ページに移動DHP(dihydropyrimidinase)は亜鉛を結合する金属酵素であり,ピリミジン塩基分解の反応を触媒し,肝臓と腎臓でおもに発現している。興味深いことに,この酵素を欠損したジヒドロピリミジン尿症では,約半数で痙攣や精神運動遅滞などの中枢神経症状をともなう1)。一方,DHPと高いアミノ酸配列相同性(57-59%)をもつ分子であるDHP関連タンパク質(DRPs;DHP related proteins)は様々なアプローチにより機能が明らかにされてきた(CRMP, collapsin-response-mediator protein;Ulip, Unc-33-like phosphoprotein;TOAD-64, turned on after division, 64kDa)2-5)。特に面白いのはDRPsが神経発生においてシグナル伝達分子(神経成長円錐の退縮に関与)として働いていることであろう3)。実際,この細胞質性のリン酸化タンパク質は,発生過程でおもに神経系で発現している。現在では,DRPsとして,ヒト,ラット,マウスでは5種(CRAM, CRMP-associated molecule6-8)を含む),ニワトリでは4種が知られている。また,脊椎動物のDRPsはDHPとの高い相同性にもかかわらず,ピリミジン塩基の分解機能はすでに失っている。
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