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文献詳細

雑誌文献

生体の科学57巻5号

2006年10月発行

文献概要

特集 生物進化の分子マップ 12.ホルモン/生理活性ペプチド

ナトリウム利尿ペプチドの進化

著者: 井上広滋1 竹井祥郎1

所属機関: 1東京大学海洋研究所生理学分野

ページ範囲:P.420 - P.421

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 ナトリウム利尿ペプチド(NP)ファミリーは,保存性の高い17アミノ酸からなる環状構造を構造上の特徴とするホルモンファミリーである1,2)。心房性ナトリウム利尿ペプチド(Atrial NP;ANP)が哺乳類の心臓から単離されて以来,ブタの脳よりB型NP(BNP),ウナギやサケ類の心臓から心室性NP(Ventricular NP;VNP),ブタやウナギの脳からC型NP(CNP)など,構造の類似するホルモンが次々と発見された。さらに近年,魚類ゲノムの研究からCNPには4種類の分子種(CNP-1~CNP-4)が存在することがわかったため3),NPファミリーは少なくとも7種類の分子種から構成されることが明らかになった(図1)。ANP,BNP,VNPは環状構造のアミノ末端側,カルボキシル末端(C末端)側の両方にペプチドの伸張(テールと呼ばれる)があるのに対し,CNPはC末端テールを欠くことが構造上の特徴である(図1)。NPファミリーは利尿をはじめ体液調節にかかわる様々な機能をもつことが知られているが,その作用様式から二つのタイプに分別することができる。ひとつは,心臓でおもに発現し,血流にのって体内を循環するタイプ(循環型)で,ANP,BNP,VNPがこれに相当する。もう一方は,脳や一部の末梢器官で傍分泌的に作用するタイプ(傍分泌型)で,CNPの多くがこれに相当する。

 現存するなかで最も原始的な脊椎動物である円口類は1種類のNPしかもたない。メクラウナギ類のNPはC末端テールをもっているが,分子系統解析によりCNP-4に近いことがわかっている。また,ヤツメウナギ類のNPは,C末端テールを欠くCNPタイプで,CNP-4に最も近い。従って,NPファミリーの祖先はCNP-4型であったと考えられる4)

参考文献

194:1-66, 2000
174:189-204, 2004
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148:41-47, 2006
22:2428-2434, 2005
18:861-868, 2001
7)井上広滋:海洋生物の機能,竹井祥郎(編),pp18-31,東海大学出版会,東京,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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