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文献詳細

雑誌文献

生体の科学57巻5号

2006年10月発行

文献概要

特集 生物進化の分子マップ 12.ホルモン/生理活性ペプチド

外分泌タンパクprolactin inducible protein(PIP/GCDFP15)遺伝子の進化

著者: 大澤資樹1

所属機関: 1東海大学医学部基盤診療学系法医学

ページ範囲:P.422 - P.423

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 prolactin inducible protein(PIP)(OMIM:176720)は,gross cystic disease fluid protein 15(GCDFP15)とも呼ばれる15-17kDの糖タンパクで,唾液,母乳,精液,涙,汗など外分泌液中に含まれ,アポクリン腺で共通して産生されている。発現がテストステロンなど男性ホルモンやプロラクチンに反応性であることが特徴である1)。CD4や細菌類と結合能をもつことから免疫系の機能や,獲得性の精子膜タンパクとして存在し,抗精子抗体の主要抗原となっているなど生殖系での機能が報告されている。

 アロ抗原として同定されたマウス精嚢由来seminal vesicle autoantigen(SVA)はPIPのホモログであり,さらに三つのSVA類似遺伝子が同定され,SVA-like proteins(SVAL)1, 2 and 3と命名されている2,3)。これら遺伝子はマウス染色体7q34上でPIP・SVAL2・SVAL1・SVAL3・SVAの順にクラスターを形成し,PIP/SVA遺伝子族と呼ばれる。アミノ酸配列ではシステイン残基とZn2+結合ドメインが特に保存されている。系統樹解析を行うと,SVA・SVALでは進化速度が速い可能性が認められ,dN/dS比も高値を得る。すなわち,正の自然淘汰が作用しているのか,過剰となった遺伝子が機能的制約開放され,無秩序なアミノ酸置換を蓄積していると考えられる。また,涙腺・耳下腺・舌下腺・乳腺・精嚢・大腸などの外分泌臓器において遺伝子発現を調べたところ,5遺伝子間で発現臓器の相違を認め,遺伝子重複を繰り返し複数となった遺伝子群は,発現の分化を獲得している4)

参考文献

262:15236-15241, 1987
296:571-576, 1993
281:94-100, 2001
325:179-186, 2004
420:520-562, 2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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