特集 生物進化の分子マップ
12.ホルモン/生理活性ペプチド
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)ファミリーの分子進化
著者:
御輿真穂1
竹井祥郎1
所属機関:
1東京大学海洋研究所生理学分野
ページ範囲:P.436 - P.438
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カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)ファミリーは,構造の保存された複数の分子からなるホルモンファミリーである。そのメンバーとして,これまでに哺乳類においては,CGRP,アミリン,アドレノメデュリン(AM),カルシトニン受容体刺激ペプチド(CRSP)が報告されている。CGRPは神経伝達物質であるほか,強力な循環調節作用を示す1)。アミリンは膵臓のβ細胞において産生され,糖代謝を調節する2)。AMは多機能ホルモンであり,循環調節作用,免疫調節作用,体液調節作用などが報告されている3)。最近同定されたホルモンであるCRSPについては,その作用はまだわかっていない。最近われわれは,AMが硬骨魚類において5種類に多様化(AM1-5)し,CGRPファミリーの中で独立したサブファミリーを作っていることを明らかにした4)。このように複雑なCGRPファミリーの分子進化を明らかにすることにより,このファミリーがもつ多様な機能への理解が深まることが期待される。
われわれは,硬骨魚類におけるCGRPファミリーの多様化の歴史を明らかにするため,遺伝子マッピングの手法を用い,メダカにおいて各遺伝子の染色体上の位置を決定した。その結果,AM1とCGRP1,AM2とAM4とCGRP2,およびAM3とアミリンはそれぞれ同一の染色体上に位置していた(図1)。さらに,ゲノム情報が明らかになっているほかの魚類や哺乳類における各遺伝子の染色体上の位置情報と比較することにより,脊椎動物におけるファミリー全体の進化の歴史を明らかにすることができた。