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文献詳細

雑誌文献

生体の科学57巻5号

2006年10月発行

文献概要

特集 生物進化の分子マップ 13.時計遺伝子

線虫におけるクロック遺伝子ホモログ

著者: 長谷川建治1 三枝徹2

所属機関: 1北里大学大学院医療系研究科脳機能科学 2北海道大学創成科学研究機構流動研究部門未踏系

ページ範囲:P.442 - P.443

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 現在,多くの生物で概日リズムに影響を与える遺伝子が多数同定され,それら時計遺伝子の転写/複製の負のフィードバックループが概日時計の心臓である,という共通した機構が提唱されている1)。線虫にも,CRYを例外として,時計遺伝子群と相同性の高い蛋白群が存在する。表1に,線虫データベース,WormBase(http://www.wormbase.org/)2)を使って検索した,ショウジョウバエとマウスの時計蛋白群と30%以上の相同性をもち,機能的ドメインまたはモチーフを共有し,かつその機能が判明しているものの一覧を示す。発生への関与が明らかにされているものが多いが,概日時計への関与は不明のままである。例えば,periodper)ホモログのlin-42は,発生後期に約6時間間隔で行われる脱皮に同調して4回だけ発現し,成虫になると測定不能なレベルに低下する3)。またtimelesstim)の相同遺伝子tim-1は,lin-42などと協同して発生後期に成虫への成長を遅らせる調節をしている4,5)。しかし,成虫線虫がはっきりした行動の概日リズムを示す6)こと,また後期発生L1期7)の行動と幼虫期の高塩浸透圧耐性8)に対しても明確な概日リズムを示すことが明らかにされており,線虫も孵化から死ぬまで24時間周期の時を刻み続ける概日時計機構をもっていることは間違いない。

 多くの時計蛋白は,basic-helix-loop-helix(bHLH)とPAS構造をもち,dioxinなどの環境汚染物質に対する毒素代謝に関与するARNTやショウジョウバエ中枢神経発生に関わるSIMなどと共に,環境変化の感知と適応(発生時の細胞を取り巻く環境も含む)に関与するbHLH-PAS蛋白に分類されている9)。PASは,PER-ARNT-SIMに由来する10)。bHLHのbasic領域はDNAへの結合,HLH領域はほかの蛋白とのダイマー形成に機能し,これにPAS領域が結合する。神経や気管支の発生,低酸素反応,および対毒素代謝などでの役割が明確にされ,かつbHLH-PAS蛋白の機能はよく保存されていることが明らかにされている。それに対し,概日時計での役割は見通しがよいとはいい難い11)perをノックアウトしても概日リズムが消失しない事例が多数報告されるようになってきた1)

参考文献

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13)長谷川建治:脳のフィジックス,長谷川建治,吉岡亨(編),pp51-101,共立出版,東京,2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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