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文献詳細

雑誌文献

生体の科学57巻5号

2006年10月発行

文献概要

特集 生物進化の分子マップ 15.膜関連

カベオリンの分子進化

著者: 向後寛1 藤本豊士1

所属機関: 1藤田保健衛生大学総合医科学研究所 2名古屋大学大学院医学系研究科分子細胞学

ページ範囲:P.450 - P.451

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 カベオラは細胞膜の凹みであり,カベオリン(cav)はカベオラ形成に重要な膜蛋白質である1)。脊椎動物では三つのcavが存在する。カベオリン1,2(cav1,cav2)はリンパ球などを除く細胞に広く発現し,カベオリン3(cav3)は筋細胞特異的に発現する。ヒトcav1,cav2の遺伝子は7番染色体上に隣接してあり,cav3遺伝子は3番染色体にある。cav遺伝子は線虫を含む無脊椎動物にも存在する。これまでに同定されているcavの分子系統樹は図1のようになる。

 分子系統樹からは,進化の過程でまずcav2が分かれ,その後にcav1とcav3が分かれることがわかる。cav2とcav1,3のエクソン・イントロン構造には違いが見られ,無脊椎動物の一部のcav遺伝子のゲノム構造はcav2に類似する1)。cav2に特異的な最後のエクソンにコードされるアミノ酸配列はcav1,3との相同性が低い(図2)。これらの事実はcav2がcavのプロトタイプであることを示唆する。細胞生物学的な性質を見ても,cav1,3は単独でカベオラを形成し得るが,cav2は脂肪滴やゴルジ装置などの細胞内膜系にとどまるという違いがある2)。無脊椎動物にカベオラがあるかどうかは不明だが,cavの祖先分子は細胞内膜系で機能する分子として存在した可能性がある。cav1,3の共通祖先分子の出現によってカベオラが形成され,より発達した細胞機能を担うようになったのかもしれない。実際cavは,ラフトが関与するシグナル伝達やエンドサイトーシスに高次の制御を及ぼす分子と考えられている3)

参考文献

5:214, 2004
152:1079, 2001
1746:349, 2005
276:38121, 2001
22:2329, 2002
84:1341, 2004
279:25574, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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