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特集 生物進化の分子マップ 18.チャネル
カリウムチャネルの比較生物学
著者: 高橋賢1 曽我部正博1
所属機関: 1名古屋大学大学院医学系研究科細胞生物物理学分野
ページ範囲:P.472 - P.473
文献購入ページに移動 イオンチャネルの起源は,われわれ真核生物の誕生のはるか昔,今から35億年以上前に存在した細胞生物の共通祖先にまで遡ると推測されている1)。真核生物と原核生物のカリウム(K)チャネルアミノ酸配列のホモロジー検索の結果,原核生物にもKチャネル関連遺伝子が複数特定された2)。これらは膜蛋白をコードしており,その3次構造はポア領域をはさむ1,2,3または6個の推定膜貫通領域を構成している(図1A)。ポア領域にはチャネルのKイオン選択性に必須であるアミノ酸配列G-[Y/F/L]-Gモチーフが共通して存在する。機能的なKチャネルのポア領域は,膜を貫通する2本の疎水性のヘリックスとそれをつなぐリンカーから成っており,この構造自体が2TM(trans membrane)というKチャネルの構造的クラスのひとつを形成している。この構造が倍加することで4TMクラス(two pore domain K channels,2P-Kチャネル)が形成され,2TMにほかのTM領域が加わったことで6TMクラスができたと考えられている。
高等動物などに見られる電位依存性Kチャネル(Kv)のS4領域は,疎水性のアミノ酸残基3または4個ごとに正電荷の塩基性残基を含んでいる(図1B)。この配列は電位依存性NaおよびCaチャネルにも存在しており,S4領域は電位センサーとして働くと考えられている。いくつかの原核生物にはKvチャネルに特徴的なS4様配列が見られるほか,内向き整流性Kチャネル(Kir)と類似の配列が見られ2),ここに真核生物のKvおよびKirチャネルの起源があると推測される。しかし,真核生物のKチャネルと原核生物のそれとのホモロジーは緩やかであり,原核生物のKチャネルが真核生物のように高いKイオン選択性を有する「真の」Kチャネルと呼べるかどうかは,さらなる研究を待たねばならない。
高等動物などに見られる電位依存性Kチャネル(Kv)のS4領域は,疎水性のアミノ酸残基3または4個ごとに正電荷の塩基性残基を含んでいる(図1B)。この配列は電位依存性NaおよびCaチャネルにも存在しており,S4領域は電位センサーとして働くと考えられている。いくつかの原核生物にはKvチャネルに特徴的なS4様配列が見られるほか,内向き整流性Kチャネル(Kir)と類似の配列が見られ2),ここに真核生物のKvおよびKirチャネルの起源があると推測される。しかし,真核生物のKチャネルと原核生物のそれとのホモロジーは緩やかであり,原核生物のKチャネルが真核生物のように高いKイオン選択性を有する「真の」Kチャネルと呼べるかどうかは,さらなる研究を待たねばならない。
参考文献
1)Hille B:Ion Channels of Excitable Membranes, 3rd ed, Sinauer, Sunderland, 2001
201(Pt 20):2791-2799, 1998
20:91-123, 1997
287:1641-1644, 2000
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