文献詳細
文献概要
特集 生物進化の分子マップ 21.感覚受容
ロドプシン類の分子進化
著者: 塚本寿夫1 寺北明久2 七田芳則1
所属機関: 1京都大学大学院理学研究科生物物理学教室 2大阪市立大学大学院理学研究科生物地球系専攻
ページ範囲:P.500 - P.501
文献購入ページに移動分子系統樹の解析から,ロドプシン類を含むGPCRの一群は共通の祖先から分子進化してきたと考えられている。一般に,GPCRは拡散性のアゴニスト(低分子化学物質やペプチドなど)を結合することにより活性状態になり,Gタンパク質を活性化する。ロドプシン類ではタンパク質部分(オプシン)にもともとアンタゴニスト(11シスレチナール)が結合しており,光エネルギーを使ってそれをアゴニスト(全トランスレチナール)に変換することにより活性状態になる。これまでのロドプシン研究のおもな対象であった脊椎動物のロドプシンは, アゴニストと直接結合する能力はなく,光受容によってのみ活性状態になる1)。もしロドプシンがアゴニストを直接結合すれば,それは光がこない状態で活性状態になる確率が増え,視細胞の暗ノイズの原因になると考えられる。したがって,分子進化の過程でアゴニストを結合する能力をなくしたことが,脊椎動物における高感度な光情報伝達系の構築に至ったと想像できる。では,どのようなメカニズムでこの性質が獲得されたのだろうか。ロドプシン類の分子進化を考える上で重要な課題である。
参考文献
掲載誌情報