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文献詳細

雑誌文献

生体の科学57巻5号

2006年10月発行

文献概要

特集 生物進化の分子マップ 22.形態形成/分化

Hox遺伝子の進化

著者: 生田哲朗1 西駕秀俊2

所属機関: 1首都大学東京大学院理学研究科 2首都大学東京大学院理工学研究科

ページ範囲:P.504 - P.505

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 ホメオボックス遺伝子のサブグループであるHox遺伝子は,系統上,刺胞動物より上位の動物で見出されている。Hox遺伝子は,DNA結合ドメインであるホメオドメインの類似性から13(あるいは14)のparalogousサブグループ(pg)に分けられ,さらにanterior(pg1,2),pg3,central(pg4-8),posterior(pg9-13)の四つに大別される。多くの場合,複数のHox遺伝子が染色体上の狭い領域に集まって存在し(Hox遺伝子クラスター),それらのクラスター内での並び順と胚の前後軸に沿った発現域の配置順が一致すること(コリニアリティ)が知られている。そして,発生過程で前後軸に沿った位置価(Hoxコード)を付与し,動物の形を決めている。このような性質から,Hox遺伝子は動物に共通な前後軸に沿った体制の源である一方で,そのクラスター構造の変化や発現パターン,機能の変化を通じて動物界に形態的な多様性をもたらしたと考えられている1)

 Hox遺伝子クラスターの成立を考える時,Para-Hox遺伝子群を外すことはできない。Hox遺伝子に非常によく似た配列をもつGsx,Xlox,Cdxの三つの遺伝子が独自のクラスターを形成するこれらの遺伝子は,後生動物の進化のかなり早い段階で一つの遺伝子クラスター(ProtoHox遺伝子クラスター)からクラスターレベルの遺伝子重複によって生じたと考えられている2)(図1)。刺胞動物では,Hox遺伝子とParaHox遺伝子の両方が見つかっており,海綿ではいずれに相当するものも報告例はない。従ってProtoHox遺伝子クラスターの成立は,刺胞動物以前,海綿動物以後と考えられる。しかし,これまで知られている刺胞動物のHox遺伝子はすべてanteriorとposteriorグループに属するものに限られ,pg3とcentralに対応する遺伝子は見つかっていない。 またParaHox遺伝子についてもXloxが報告されていない。こうしたことから,刺胞動物と旧口・新口動物の共通祖先がanterior,posteriorに対応する二つのHox遺伝子のみをもっていたのか,pg3とcentral,Xloxは刺胞動物の系譜で失われたのかは未だ決着していない。

参考文献

1)Carroll SB et al:From DNA to Diversity, Blackwell Publishing, 2001
6:881-892, 2005
361:490-492, 1993
101:15118-15123, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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