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特集 血管壁
血管平滑筋のホスファターゼを介する収縮制御
著者: 仙葉愼吾1 北澤俊雄1
所属機関: 1ボストン生物医学研究所
ページ範囲:P.560 - P.569
文献購入ページに移動 血管平滑筋の生理的な収縮は,ミオシン制御軽鎖(MLC)の19番目のセリン残基(Ser19)のリン酸化によって引き起こされる。すなわち,細胞外からの刺激に応じて細胞内Ca2+の濃度が上昇すると,Ca2+がカルモデュリンに結合し,それがミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)を活性化しMLCをリン酸化する。その結果,ミオシンATPase活性が上昇し,その際のATP分解反応によって得られるエネルギーを利用してアクチン線維を滑らせ,平滑筋細胞を収縮させる。一方,細胞内Ca2+濃度が減少すると,Ca2+がカルモデュリンから解離し,MLCKは不活性化する。その結果,リン酸化MLCを脱リン酸化する酵素であるミオシン軽鎖ホスファターゼ(MLCP)の活性が優位となるため,MLCは脱リン酸化され,ミオシンATPase活性が低下することで平滑筋は弛緩する。従って,基本的に平滑筋収縮の大きさはMLCのリン酸化量によって調整されていることになる。
この古典的な考え方によると,MLCP活性は特に制御を受けておらず平滑筋収縮はMLCKの活性制御によってのみ調節されている。平滑筋持続収縮を維持するためには,細胞内Ca2+濃度を高く保ち,MLCKの活性を高く維持し続けることでMLCをリン酸化し続けなくてはならない。これはリン酸化のためにATPを消費し続けなくてはならず,持続収縮を起こす平滑筋細胞にとってエネルギー効率上,非常に不利なことである。しかし,実際の細胞では,細胞外からの刺激によってMLCKが活性化されると同時にMLCPの活性が抑制され,効率よくミオシンのリン酸化量を高く維持することで細胞を収縮させている(図1A)。
この古典的な考え方によると,MLCP活性は特に制御を受けておらず平滑筋収縮はMLCKの活性制御によってのみ調節されている。平滑筋持続収縮を維持するためには,細胞内Ca2+濃度を高く保ち,MLCKの活性を高く維持し続けることでMLCをリン酸化し続けなくてはならない。これはリン酸化のためにATPを消費し続けなくてはならず,持続収縮を起こす平滑筋細胞にとってエネルギー効率上,非常に不利なことである。しかし,実際の細胞では,細胞外からの刺激によってMLCKが活性化されると同時にMLCPの活性が抑制され,効率よくミオシンのリン酸化量を高く維持することで細胞を収縮させている(図1A)。
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