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特集 意識―脳科学からのアプローチ
知覚闘争のメカニズムとダイナミズム
著者: 村田勉1
所属機関: 1(独)情報通信研究機構未来ICT研究センターバイオICTグループ
ページ範囲:P.4 - P.10
文献購入ページに移動 知覚の脳内メカニズムにおける重要な問題の一つは,知覚情報の意識化過程をいかに理解するかということであろう。意識にのぼる内容は,感覚器に与えられる情報によって一義的に決められるとは限らない。このため,感覚情報のどのような側面がいかなる仕組みによって選択され,あるいは構成されて意識にのぼるのか,また,感覚情報と意識化される内容との間にはどのような関係があるのか(整合性など)といった問題が提起される。同じ感覚刺激から複数の異なる意識内容を生じる現象の代表的なものとして,ネッカーの立方体などの多義図形知覚(ambiguous figure perception)および両眼視野闘争(binocular rivalry)をあげることができる。これらの現象では,意識される知覚像(percept)の交替が起きるため,総称的に知覚闘争(perceptual rivalry)と呼ぶことにする。
本解説では,両眼視野闘争の脳内部位の特定をめぐる研究の進展と,知覚闘争に共通なダイナミズムの性質について説明する。それを通じて,感覚情報から意識内容に至る知覚のメカニズムを考えるためには,様々な処理水準の多数の部位が相互作用しながら構成するシステムの振舞いを考えなければならないこと,その上でシステムの「状態」という観点が有効かもしれないという可能性について議論する。
本解説では,両眼視野闘争の脳内部位の特定をめぐる研究の進展と,知覚闘争に共通なダイナミズムの性質について説明する。それを通じて,感覚情報から意識内容に至る知覚のメカニズムを考えるためには,様々な処理水準の多数の部位が相互作用しながら構成するシステムの振舞いを考えなければならないこと,その上でシステムの「状態」という観点が有効かもしれないという可能性について議論する。
参考文献
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