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特集 意識―脳科学からのアプローチ
ワーキングメモリと意識
著者: 船橋新太郎1
所属機関: 1京都大学大学院人間・環境学研究科認知・行動科学講座認知科学分野
ページ範囲:P.53 - P.64
文献購入ページに移動 「意識」とはどのようなものかを定義するのは難しい。広辞苑では意識を,「認識し,思考する心の働き。感覚的知覚に対して,純粋に内面的な精神活動」,あるいは,「今していることが自分でわかっている状態。われわれの知識・感情・意志のあらゆる働きを含み,それらの根底にあるもの」などと説明している。自分が今していることは何か,そしてこれから何をしようとしているのかを自分で理解しているためには,現在の自分の内的・外的な状態が把握されている必要がある。しかし,今の状態は直前の状態からの延長であり,直前の状態はさらにその前の状態からの延長であるように,今の自分の状態を把握し理解するためには,今に至る自分の内的・外的な状況やその変化の履歴を,時間的な文脈の中で把握する必要がある。周囲の変化や自分自身の中での変化の時間的文脈を把握し,時間軸上で一貫した行動をとろうとすると,少なくともしばらく前の自分自身の状況に関する情報が必要である。
一方,判断,意思決定,推理や思考などを必要とする時,ルーチン化したステレオタイプな行動のみでは解決できない問題が生じた時,外界のさまざまな情報に注意が向けられると同時に,長期記憶として貯蔵され,普段は無意識下にある関連情報を意識化させ,思考,判断,推論などの内的な情報処理プロセスを働かせる。このような場面においても,問題解決に必要な情報の一時的な保持や活性化と同時に,それらの情報を用いた処理が行われていることに疑問の余地はない。
一方,判断,意思決定,推理や思考などを必要とする時,ルーチン化したステレオタイプな行動のみでは解決できない問題が生じた時,外界のさまざまな情報に注意が向けられると同時に,長期記憶として貯蔵され,普段は無意識下にある関連情報を意識化させ,思考,判断,推論などの内的な情報処理プロセスを働かせる。このような場面においても,問題解決に必要な情報の一時的な保持や活性化と同時に,それらの情報を用いた処理が行われていることに疑問の余地はない。
参考文献
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