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特集 嗅覚受容の分子メカニズム
嗅覚の可塑性
著者: 三輪尚史1
所属機関: 1東邦大学医学部生理学講座細胞生理学分野
ページ範囲:P.280 - P.284
文献購入ページに移動 われわれは匂いを習慣的に受容すると,その匂いに対する反応性が増強するのをしばしば経験する。例えば,自分の好きな料理の匂いを遠くから感じることができたり,他の料理の匂いから識別したりする。また,調香師やソムリエに代表されるように,職業的訓練によって匂いの感度および識別能が常人の域を超えるような場合もある。一体,こうした嗅覚の増強はどのように制御されているのだろうか。
生物は常時変化する外部および内在環境に適応するため,それらの変化に対して適切に応答する性質(可塑性)をもつ。特に,生体の反応性を決定する脳神経系においては,反復刺激によって神経の反応性が亢進および減少する(神経の可塑性)。神経の可塑性は記憶や学習の基盤になる生体事象の一つと考えられており,その分子メカニズムの研究が広く行われている。従来,神経の可塑性の研究では,シナプスの形態変化やシナプス伝達効率の変化が着目されてきた。最近になって,成体の中枢神経系においても海馬ニューロンや嗅球ニューロンが新生し,既存の神経組織に統合されることが明らかになった。これら新生ニューロンが既存のニューロンから成る情報処理を修飾することで可塑性を調節している可能性がある。
生物は常時変化する外部および内在環境に適応するため,それらの変化に対して適切に応答する性質(可塑性)をもつ。特に,生体の反応性を決定する脳神経系においては,反復刺激によって神経の反応性が亢進および減少する(神経の可塑性)。神経の可塑性は記憶や学習の基盤になる生体事象の一つと考えられており,その分子メカニズムの研究が広く行われている。従来,神経の可塑性の研究では,シナプスの形態変化やシナプス伝達効率の変化が着目されてきた。最近になって,成体の中枢神経系においても海馬ニューロンや嗅球ニューロンが新生し,既存の神経組織に統合されることが明らかになった。これら新生ニューロンが既存のニューロンから成る情報処理を修飾することで可塑性を調節している可能性がある。
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