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文献詳細

雑誌文献

生体の科学58巻4号

2007年08月発行

文献概要

特集 嗅覚受容の分子メカニズム

鋤鼻器:フェロモン受容

著者: 椛秀人1

所属機関: 1高知大学医学部生理学講座

ページ範囲:P.308 - P.313

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 多くの哺乳動物は,種,性,年齢,発情周期,ストレス状態,社会的順位などを特徴付けるフェロモン(pheromone)を受容・処理して自分の行動や生理を変化させる。フェロモンという術語は,ギリシャ語のpherein(運ぶ)とhormon(興奮させる)との合成語であり,「個体から体外に出され,同種の他個体によって受容されると,特異的な反応を引き起こす物質」として定義された1)。フェロモンは効果の面から二つに大別される。一つはリリーサー効果と呼ばれるもので,中枢神経系に働いて直接に行動を変化させる。他の一つはプライマー効果と呼ばれるもので,神経内分泌系を介して生理的変化を誘起する。

 ヒトや高等霊長類を除く多くの哺乳動物は,通常の匂いの情報処理系(主嗅覚系または単に嗅覚系とよばれる)に加えて,主としてフェロモンを受容・処理する鋤鼻(副嗅覚)系を有している(図1)。鼻中隔腹縁に存在する鋤鼻器の感覚細胞には鋤鼻受容体(V1RとV2R)が発現しており,これらがフェロモンの受容に関わる。本稿では,哺乳動物の鋤鼻系の構造と機能について,最近の知見を踏まえて概説する。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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