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特集 タンパク質間相互作用 7.シグナル伝達
タンパク質間相互作用を介するWntシグナルの制御機構
著者: 菊池章1
所属機関: 1広島大学大学院医歯薬学総合研究科放射線ゲノム医科学講座分子細胞情報学
ページ範囲:P.404 - P.406
文献購入ページに移動●Wntシグナル伝達経路
Wntシグナル伝達経路は線虫やショウジョウバエから哺乳動物に至るまで種を越えて保存されており,胎生期における体節・体軸形成や器官形成,出生後の細胞の増殖,分化を制御する1)。Wntは分泌性タンパク質であり,ヒトのゲノム上19種類のWntがサブファミリーを形成し,それぞれが細胞膜上の7回膜貫通型受容体Frizzledと,共役受容体である1回膜貫通型低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5,6(LRP5,6)に結合する2,3)。
通常,Wntの非存在下では,細胞質内 β-カテニンのタンパク質量は低く保たれている。これはβ-カテニンが恒常的にプロテアソームで分解されるためである。Wntが分泌されて細胞膜上のFrizzled/LRP5,6共役受容体に結合すると,そのシグナルが細胞内へと伝達されてβ-カテニンの分解が抑制される。安定化したβ-カテニンは細胞質内で蓄積し核内に移行した後,転写因子のT-cell factor/lymphoid enhancer factor(Tcf/Lef)と複合体を形成して種々の標的遺伝子の発現を促進することによって,細胞の増殖や分化を制御する4)。このように,Wntのシグナルは β-カテニンの細胞質内のタンパク質量を調節することにより,Tcf/Lefを介する遺伝子発現を制御している(β-カテニン経路)。
Wntシグナル伝達経路は線虫やショウジョウバエから哺乳動物に至るまで種を越えて保存されており,胎生期における体節・体軸形成や器官形成,出生後の細胞の増殖,分化を制御する1)。Wntは分泌性タンパク質であり,ヒトのゲノム上19種類のWntがサブファミリーを形成し,それぞれが細胞膜上の7回膜貫通型受容体Frizzledと,共役受容体である1回膜貫通型低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5,6(LRP5,6)に結合する2,3)。
通常,Wntの非存在下では,細胞質内 β-カテニンのタンパク質量は低く保たれている。これはβ-カテニンが恒常的にプロテアソームで分解されるためである。Wntが分泌されて細胞膜上のFrizzled/LRP5,6共役受容体に結合すると,そのシグナルが細胞内へと伝達されてβ-カテニンの分解が抑制される。安定化したβ-カテニンは細胞質内で蓄積し核内に移行した後,転写因子のT-cell factor/lymphoid enhancer factor(Tcf/Lef)と複合体を形成して種々の標的遺伝子の発現を促進することによって,細胞の増殖や分化を制御する4)。このように,Wntのシグナルは β-カテニンの細胞質内のタンパク質量を調節することにより,Tcf/Lefを介する遺伝子発現を制御している(β-カテニン経路)。
参考文献
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