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文献詳細

雑誌文献

生体の科学58巻5号

2007年10月発行

文献概要

特集 タンパク質間相互作用 8.チャネル

心筋Caチャネルと細胞内タンパク質間の相互作用

著者: 當瀬規嗣1 小林武志1

所属機関: 1札幌医科大学医学部生理学第一講座

ページ範囲:P.408 - P.409

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 電位依存性Caチャネルは細胞膜に存在し,細胞外からのCaイオン流入の主要な経路である。電位依存性Caチャネルは遺伝子とタンパク構造の解析から,イオン通路を構成するα1サブユニットとβ,α2δ,γ(一部)の修飾サブユニットから成ることがわかっている1)。このうちαサブユニットをコードする遺伝子にはCav1,Cav2,Cav3の三つのグループがあることが確認されている。機能の面から見ると,Cav1はL型,Cav2はN,P/Q,R型,Cav3はT型のそれぞれのCaチャネルのα1サブユニットである。電位依存性Caチャネルを介して流入したCaイオンは,直接膜電位を脱分極させ活動電位生成に関わるだけでなく,筋細胞にあっては収縮,腺細胞にあっては分泌顆粒の移動,神経にあってはシナプス伝達に関与し,生体反応の枢軸をなしている。したがって,電位依存性Caチャネルの活性を調節することは,細胞機能の調節においてきわめて効果的であると考えられ,実際,数多くの細胞情報伝達機構の最終目標分子となっている。

 心筋細胞では,洞房結節,房室結節の活動電位はCa依存性であり,収縮自体も細胞外Ca依存性であり,電位依存性Caチャネルは心臓機能を決定付ける存在である。心筋の電位依存性Caチャネルは大部分がL型であり,活動電位やCa流入について主要な役割を演じている。自律神経や生理活性物質によるL型Caチャネル機能の調節は,おもにタンパクリン酸化酵素を介して,リン酸化というしくみで行われる。これまでに,cAMP依存性キナーゼ(Aキナーゼ)とcGMP依存性キナーゼによるリン酸化過程が明らかになっている。アドレナリンβ受容体刺激はGsタンパクを活性化するが,cAMP産生によりAキナーゼを活性化する経路のほかに,Gsタンパクが直接的にL型Caチャネルを活性化しうることが報告されている。これはタンパク-タンパク相互作用によると推定されるが,詳細の解明はなされていない。一方,L型Caチャネルは,骨格筋においてCaイオンを介さずに直接的なタンパク-タンパク相互作用により筋小胞体のリアノジン受容体を活性化し,興奮収縮連関を構成しているが,心筋でのこの機構の有無は諸家の一致をみていない。

参考文献

48:1111-1124, 1995
103:347-353, 2007
287:C1717-C1724, 2004
100:13093-13098, 2003
40:562-569, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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