特集 タンパク質間相互作用
9.トランスポーター
膜トランスポーターとタンパク質間相互作用
著者:
杉浦智子1
加藤将夫1
辻彰1
所属機関:
1金沢大学大学院自然科学研究科薬学系
ページ範囲:P.412 - P.414
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細胞膜に発現するトランスポーターは,生体にとって必要な物質を細胞内に取り込み,不要な物質を細胞外に排除するといった細胞内外の選択的物質輸送を担う膜タンパク質である。そのため,生体の恒常性の維持や薬物の体内動態において重要な役割をしていると考えられ,これまでに数多くのトランスポーターの分子的実体が解明され,その輸送特性研究が行われてきた。現在のところ,トランスポーターは2種類のスーパーファミリーに大別され,ATPの加水分解エネルギーを利用して基質を輸送するABC(ATP binding cassette)トランスポーターと,促進拡散あるいは細胞膜内外のイオンの濃度勾配を駆動力として基質を輸送するSLC(solute carrier)トランスポーターがある。これらトランスポーターは従来,単独分子で機能するものと考えられてきたが,1分子種の機能だけで説明することができないものも存在する。そこで近年,細胞膜近傍におけるタンパク質間相互作用を介したタンパク質複合体を形成し,これによって膜タンパク質の機能・発現が調節されていると考えられるようになってきた。