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文献詳細

雑誌文献

生体の科学58巻5号

2007年10月発行

文献概要

特集 タンパク質間相互作用 12.細胞骨格

ネブリンと結合タンパク質による骨格筋の制御

著者: 高野和儀1 遠藤剛1

所属機関: 1千葉大学大学院理学研究科

ページ範囲:P.442 - P.443

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 ネブリン(nebulin)は骨格筋のサルコメアを構成する500-900kDaの巨大なフィラメント状のタンパク質である1)。ネブリンは骨格筋では筋原線維タンパク質の約2-3%を占めるが,心筋での発現はほとんどみられない。それに代わり心筋では,ネブリンのC末端側と相同性の高い107kDaのネブレット(nebulette)が存在している。ネブリン1分子はアクチンフィラメント(thin filament)全長にわたって伸展した状態で存在しており,そのN末端はアクチンフィラメントの先端に位置し,C末端はZ帯の中に入り込んでいる。また1本のthin filamentあたりネブリン2分子が存在すると考えられる。

 ネブリンのN末端にはグルタミン酸に富んだ領域があり,それに続いて約35アミノ酸から成るモジュール(M)が166ないし185個並んでいる(図1)。このモジュールの数の違いは,選択的スプライシングにより生じ,これによって長さの異なったネブリンが生ずる。この長さの違いが,骨格筋の種類や発生過程によって異なるthin filamentの長さの違いに対応している。このことから,ネブリンはthin filamentの鋳型として長さを決定する物差しの役割をしていると考えられるようになった。中央のM9-M162は,7個のモジュールリピート(R1-R7)がスーパーリピート(S)を形成し,これが22回繰り返している(S1-S22)。各リピートの中央付近には保存された配列SDXXYKがあり,アクチンモノマー(G-アクチン)との結合にかかわっている。また各スーパーリピートのR1のC末端にある保存された配列WLKGIGWには,トロポミオシン-トロポニンが結合すると考えられている。アクチンフィラメントはG-アクチンが約76nmのピッチをもつ2本のらせん状に重合したものであり,1本のらせんの1/2ピッチに約7個のG-アクチンが存在する。したがって1個のモジュールリピートが1個のG-アクチンと結合すれば,各スーパーリピートはらせんの1/2ピッチに対応することになる(図1)。また,トロポミオシンとトロポニン複合体はらせんの1/2ピッチあたりそれぞれ1分子存在するので,各スーパーリピートはこれらにも対応している。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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