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特集 タンパク質間相互作用 14.細胞分化
細胞の分化増殖制御におけるIdタンパク質のはたらき
著者: 横田義史1
所属機関: 1福井大学医学部生命情報医科学講座分子遺伝学領域
ページ範囲:P.464 - P.466
文献購入ページに移動●Idタンパク質とは
MyoDをはじめとしたbasic helix-loop-helix(bHLH)型転写因子は様々な系列の細胞分化や増殖制御,細胞機能の発現に深く関わっているが,これらの転写因子の機能を抑制的に制御するのがId(inhibitor of DNA binding/differentiation)である。哺乳動物には4種類のId遺伝子(Id1-Id4)があり,いずれもbHLH型転写因子と同様のHLHモチーフはもつものの,DNA結合領域を含むそれ以外の機能領域は見出されていない。Idが細胞分化の調節機能だけでなく増殖促進作用などをもつことは培養細胞を用いた研究や遺伝子発現調節の解析などからわかっていたが,遺伝子欠損マウスを用いた解析から,生体において想像以上に多彩な生命現象に深く関与していることが明らかになった。Id2が二次リンパ組織の形成,NK細胞の分化,妊娠乳腺上皮細胞の増殖などに必須であること,IdあるいはId3が血管新生に重要な役割を担うこと,Id4が中枢神経系の正常な発達に不可欠であることなどはその例であり,また,いずれの組み合わせでも二つ以上のId遺伝子を欠損するマウスは胎生致死となることは,Idの生体における重要性を強く示唆する。
一方,IdはbHLH型転写因子だけでなく,Rb(Retinoblastoma protein),Ets(c-Ets-1,c-Ets-2,Elk-1),Pax5,MIDA1,SREBP1c,p204,polycystin-2,ENH,Hes1,MITF,APC/Cなどとも会合することが報告されている。これらすべてが生理的意義のあるものかどうかは不明であるが,IdがbHLH型転写因子以外の分子の機能も制御して,あるいは,逆にこれらの分子によってIdが機能制御を受けることで,様々な生命現象に関わっている可能性が示唆される。本稿では,まずIdとbHLH型転写因子の相互作用について触れた後,最近発表された興味深い知見について概説することとし,それ以外については総説1-5)を参照して頂きたい。
MyoDをはじめとしたbasic helix-loop-helix(bHLH)型転写因子は様々な系列の細胞分化や増殖制御,細胞機能の発現に深く関わっているが,これらの転写因子の機能を抑制的に制御するのがId(inhibitor of DNA binding/differentiation)である。哺乳動物には4種類のId遺伝子(Id1-Id4)があり,いずれもbHLH型転写因子と同様のHLHモチーフはもつものの,DNA結合領域を含むそれ以外の機能領域は見出されていない。Idが細胞分化の調節機能だけでなく増殖促進作用などをもつことは培養細胞を用いた研究や遺伝子発現調節の解析などからわかっていたが,遺伝子欠損マウスを用いた解析から,生体において想像以上に多彩な生命現象に深く関与していることが明らかになった。Id2が二次リンパ組織の形成,NK細胞の分化,妊娠乳腺上皮細胞の増殖などに必須であること,IdあるいはId3が血管新生に重要な役割を担うこと,Id4が中枢神経系の正常な発達に不可欠であることなどはその例であり,また,いずれの組み合わせでも二つ以上のId遺伝子を欠損するマウスは胎生致死となることは,Idの生体における重要性を強く示唆する。
一方,IdはbHLH型転写因子だけでなく,Rb(Retinoblastoma protein),Ets(c-Ets-1,c-Ets-2,Elk-1),Pax5,MIDA1,SREBP1c,p204,polycystin-2,ENH,Hes1,MITF,APC/Cなどとも会合することが報告されている。これらすべてが生理的意義のあるものかどうかは不明であるが,IdがbHLH型転写因子以外の分子の機能も制御して,あるいは,逆にこれらの分子によってIdが機能制御を受けることで,様々な生命現象に関わっている可能性が示唆される。本稿では,まずIdとbHLH型転写因子の相互作用について触れた後,最近発表された興味深い知見について概説することとし,それ以外については総説1-5)を参照して頂きたい。
参考文献
20:429-440, 2000
20:8290-8298, 2001
190:21-28, 2002
13:410-418, 2003
5:603-614, 2005
6)Li X et al:Nat. Cell Biol 7:1202-1212,
442:471-474, 2006
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