文献詳細
文献概要
特集 タンパク質間相互作用 19.産業
タンパク質間相互作用をターゲットとした新薬開発の戦略
著者: 古閑比佐志1
所属機関: 1かずさDNA研究所ヒトゲノム研究部ゲノム医学研究室
ページ範囲:P.494 - P.495
文献購入ページに移動創薬は,1929年のペニシリンの発見に代表されるように天然物由来成分からその薬理活性で薬剤を探索する(あるいは偶然に見つかる)という時代から,化学合成の時代を経て,分子生物学の潮流に乗った「ゲノム医学」の時代に突入した。そこでは,NMR(核磁気共鳴)やX線装置による立体構造解析技術や,ホモロジーモデリングによる立体構造予測技術の進歩が,SBDD(Structure Based Drug Design)という創薬の新しいアプローチを生み出した。SBDDはPCクラスターなどの大規模計算機システムとの組み合わせにより,バーチャルスクリーニングとも呼ばれるin silicoスクリーニングを可能とし,結果として短期間・低コストでの創薬を可能とした。このような手法により開発された薬剤としては,抗インフルエンザ薬(商品名:タミフルなど)や日本人研究者による重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスのプロテアーゼ3CL-PROをターゲットとしたリード化合物(コード:RIKEN00046)などがある。その一方で現在までのSBDDでの成功例は,少なくとも立体構造予測が可能でかつポケットを形成するような活性中心(しばしば“鍵穴”と“鍵”に喩えられる)に対するリガンドの阻害分子が中心であった。
参考文献
掲載誌情報