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文献詳細

雑誌文献

生体の科学58巻6号

2007年12月発行

特集 グリケーション(糖化)

血栓形成とAGEs

著者: 山岸昌一1 竹内正義2

所属機関: 1久留米大学医学部内科学心臓・血管内科 2北陸大学薬学部病態生理化学

ページ範囲:P.554 - P.557

文献概要

 糖尿病は,インスリンの分泌障害や標的臓器における作用不全によって慢性の高血糖がひきおこされる代謝疾患群である。しかしながら,患者のQOLと生命予後の観点からみれば,糖尿病は心血管病であるともいえる。事実,糖尿病腎症は新規透析導入の原因疾患の第1位であるし,網膜症によって年間約4,000人の方々が失明に至っている。さらに糖尿病患者の約40-50%が心血管系の疾患が原因で亡くなられているのが現状である。これらの事実は糖尿病においては,慢性の血管合併症を予防することが,治療戦略上最も重要な課題であることを示している。

 ごく最近,糖尿病血管合併症のメカニズムを考える上で興味深い報告がなされた。EDIC-DCCT試験によれば,1型糖尿病の初期6.5年間の血糖コントロールが厳格であると,その効果が長期にわたって持続し,試験終了後少なくとも8年間は細小血管症の進展が抑制でき,11年後の心血管イベントの発症も有意に抑えられることが見出された1)。このことは,ヒトの糖尿病血管症においても高血糖の記憶(hyperglycemic memory)が存在することを示唆している。終末糖化産物(advanced glycation end-products,以下AGEs)は,血糖コントロールの程度とその持続期間により不可逆的に生体内で形成,蓄積されることから,AGEs病因仮説はhyperglycemic memoryという現象と最もよく符号する。

 本稿では,糖尿病血管合併症におけるAGEsとその受容体(RAGE)の役割について,血栓形成の観点を中心に概説する。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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