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連載講座 中枢神経系におけるモジュレーション・5
Rho連携キナーゼによる海馬LTPの変調
著者: 真鍋俊也1
所属機関: 1東京大学医科学研究所基礎医科学部門神経ネットワーク分野
ページ範囲:P.571 - P.575
文献購入ページに移動 海馬はある種の記憶や学習の中枢とされており,そこで観察されるシナプス可塑性がその細胞レベルでの基礎過程であると考えられている。シナプス可塑性の中でも海馬における長期的可塑性の代表である興奮性シナプス伝達の長期増強(long-term potentiation:LTP)は記憶形成との密接な関連が示唆されている。シナプス可塑性の中では,海馬CA1領域におけるLTPが最もよく調べられており,その誘導・発現機構については,これまで多くの知見が得られている1)。CA1領域でのLTPの誘導には,グルタミン酸受容体の一種であるNMDA受容体の活性化が必須であり,この受容体チャネルを介してシナプス後細胞内に流入するカルシウムイオンが細胞内生化学過程を活性化することにより,やはりグルタミン酸受容体の一種であるAMPA受容体により媒介される正常シナプス伝達が長期的に増強する現象がLTPである。このように,LTP誘導の主要経路についてはかなり明らかになってきたが,これら以外にもLTPの誘導・発現を修飾する機能分子がシナプスには多数存在し,そのひとつとしてRho連携キナーゼ(Rho-associated kinase:ROCK)が最近注目されている。本稿では,海馬LTPの変調におけるRho-ROCK経路の役割に関するわれわれの最近の研究成果を概説したい。
参考文献
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