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生体組織工学と再生誘導治療―再生医療の原点にせまる
著者: 田畑泰彦1
所属機関: 1京都大学再生医科学研究所生体組織工学研究部門生体材料学分野
ページ範囲:P.576 - P.582
文献購入ページに移動バイオマテリアル(生体材料,体内で用いるあるいは生体成分と触れて用いられる材料)や人工臓器に完全に依存した再建外科治療と臓器移植との2大先端外科治療は,これまでに多くの患者の生命を救ってきたことは事実であるが,一方では,その治療技術,方法論の限界も見えてきている。このような状況の中で考えられているのが,イモリのしっぽが再生する現象をヒトで誘導し,治療に役立てようとする試み,再生誘導治療(一般には再生医療と呼ばれている)である。
その基本アイデアは,細胞の増殖,分化能力を最大限に活用することにより,生体組織を再生誘導させることである1,2)。体に本来備わっている自己の自然治癒力を高め,病気を治すアプローチは,体にやさしい理想的な治療法となる。もちろん,この再生誘導治療にも長所と短所があるが,上述の先端外科治療の欠点を補い,治療の選択肢を増すとともに,従来,治療の適用拡大および新しい治療技術も可能となることから,現在,第3の治療法として期待されている。加えて,治療薬を投与する内科的治療手段により,組織の再生誘導能力を高め,肝硬変,肺線維症,拡張型心筋症,慢性腎炎などの難治性慢性線維性疾患を治療したり3),血管壁にできた瘤(動脈瘤)を患者自身の生体組織によって完全に閉鎖してしまうという画期的な血管内カテーテル治療(これまでは血栓によって閉鎖され,血栓の再溶解による瘤の再形成が問題であった)などの試みも始められている4)。今後は,内科治療においても再生誘導治療は重要な役割を演じていくと考えられる1,2)。
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