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特集 コンピュータと脳
ペタコンの夢:全脳モデルプラットフォーム構築を目指して
著者: 臼井支朗1
所属機関: 1理化学研究所脳科学総合研究センターニューロインフォマティクス技術開発チーム
ページ範囲:P.33 - P.37
文献購入ページに移動 脳はゲノム情報に基づいて作られる蛋白質から神経細胞が作られ,それを機能素子とする特有の構造をもった神経回路網として構成されている。そして環境との相互作用や学習,つまり生命体として生きることによってその高度な機能が作られていく1,2)。しかし,今日の進んだ科学技術の時代においてさえ,その存在は神秘ともいえる。われわれはその基本原理を解明すべく,過去の知見を集積・統合し,全脳モデルとして記述・共有し,そのシミュレーションを通して生命独自の「情報原理」の解明に向けた新しい研究を展開する基盤を構築する必要がある。
コンピュータを使ったシミュレーション技術は,地球シミュレータなど今日では科学技術研究の理論・実験に次ぐ第3の手法として確立され,次世代統合シミュレーション技術として展開されている3)。こうしたコンピュータによるモデリング技術が実験神経科学と統合されることにより,既存の実験データからより多くの知識が得られるようになってきた。定量モデルは,実験観察や一見したところ無関係な現象を説明するのに役立つ。それらは,実験を通してテストできる仮説を生み,新たな解明を目指す実験を考える上で大きな示唆を与える。
コンピュータを使ったシミュレーション技術は,地球シミュレータなど今日では科学技術研究の理論・実験に次ぐ第3の手法として確立され,次世代統合シミュレーション技術として展開されている3)。こうしたコンピュータによるモデリング技術が実験神経科学と統合されることにより,既存の実験データからより多くの知識が得られるようになってきた。定量モデルは,実験観察や一見したところ無関係な現象を説明するのに役立つ。それらは,実験を通してテストできる仮説を生み,新たな解明を目指す実験を考える上で大きな示唆を与える。
参考文献
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