特集 細胞外基質-研究の新たな展開
細胞外基質リモデリングの制御機構
著者:
大村彰1
松崎朋子1
野田亮1
所属機関:
1京都大学大学院医学研究科分子腫瘍学領域
ページ範囲:P.134 - P.142
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多細胞生物の発生・形態形成は,細胞外基質(ECM)に大きく依存しており,その破綻は時に致死的な効果をもたらす。また,成体内の各組織が示す多様な機能は,それを構成する細胞の種類だけでなくECMの多様性にも依存している。コラーゲン,フィブロネクチン,ラミニン,各種プロテオグリカンを始め,種々の高分子物質から構成されるECMの難溶性3次元ネットワークは,組織構築の支持体(充填物)や細胞移動の場として役立つのみならず,シグナル伝達分子のリザーバーやコファクター,独自の受容体を介したコシグナルとして働くなど多様な役割を持ち,細胞の増殖,生存,分化,運動,形態形成などに多大な影響を及ぼす。さらにECMは他の多くの成体成分同様,分解と合成の動的平衡の上に成立している。ECMターンオーバーの速度は,組織や器官,発生段階などにより様々であるが,例えば,成熟個体の軟骨ではECMの半減期は数年であるのに対し,発生期のラット脳では24時間以下といわれている1)。では,こうしたECMの分解と合成は,どのような調節を受けているのだろうか。