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特集 細胞外基質-研究の新たな展開
細胞機能の力学的制御と細胞外マトリクス工学
著者: 原田伊知郎1 赤池敏宏1
所属機関: 1東京工業大学大学院生命理工研究科生体分子機能工学専攻
ページ範囲:P.143 - P.150
文献購入ページに移動とりわけ近年,個体発生,臓器(組織)形成の分子シナリオが少しずつ解読されていくにともない,細胞の足場として,ECMの果たす役割の重要性が指摘されつつある。受精卵からスタートして必要な時刻に,本来あるべき空間位置に,しかも必要な大きさで臓器・組織を形成させる上でECMの果たす役割は極めて大きいと考えられる。近年明らかにされてきたECMの種類の豊富さに加えて,それぞれが異なるシグナルを誘起することからも,ECMはもはや単なる足場ではなく,サイトカインなどの液性因子と同等レベルで捉えるべき細胞機能制御分子であるといっても過言ではないであろう。さらに,生体内にあるECMは見事なほどに制御された構造体を形成することから,ECMの生理的機能は単なるリガンドだけでないことも明らかである。ECMは同一成分で形成されていても全く構造・物性のことなる組織を構築する。例えば,コラーゲンは同一のType Ⅰであっても靱帯・腱や真皮とでは繊維化構造が大きく異なるため物性・力学的強度が全く異なり,その組織の機能を特徴づけている。このようなリガンドとしての存在だけではないECMの機能も含めて生体外環境に復元することは容易ではない。
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