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文献詳細

雑誌文献

生体の科学59巻2号

2008年04月発行

文献概要

特集 細胞外基質-研究の新たな展開

細胞機能の力学的制御と細胞外マトリクス工学

著者: 原田伊知郎1 赤池敏宏1

所属機関: 1東京工業大学大学院生命理工研究科生体分子機能工学専攻

ページ範囲:P.143 - P.150

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 再生医療の飛躍的な発展にともない,今あらためて細胞外マトリクス(ECM)が注目されるようになっている。それは,細胞をソースとした研究分野では,生体外(in vitro)に取り出した細胞の増殖や分化の機能を思いのままに制御することがいわば究極的な目標であり,そのためには生体内における細胞外環境を見直す必要が出てきたためである。現在まで行われてきたシャーレに細胞を培養するin vitro細胞培養法は,複雑な生体内(in vivo)にある細胞の環境に比べて非常にシンプルであり,細胞培養液中に含まれるサイトカインやホルモンなどの液性因子の添加量を厳密にコントロールすることが可能であることから,その方法そのものには疑いをもつ研究者は少ない。しかし,培養細胞の周辺環境が生体内環境とかけ離れてしまっているために見落としていたことも多く存在することは明らかである。

 とりわけ近年,個体発生,臓器(組織)形成の分子シナリオが少しずつ解読されていくにともない,細胞の足場として,ECMの果たす役割の重要性が指摘されつつある。受精卵からスタートして必要な時刻に,本来あるべき空間位置に,しかも必要な大きさで臓器・組織を形成させる上でECMの果たす役割は極めて大きいと考えられる。近年明らかにされてきたECMの種類の豊富さに加えて,それぞれが異なるシグナルを誘起することからも,ECMはもはや単なる足場ではなく,サイトカインなどの液性因子と同等レベルで捉えるべき細胞機能制御分子であるといっても過言ではないであろう。さらに,生体内にあるECMは見事なほどに制御された構造体を形成することから,ECMの生理的機能は単なるリガンドだけでないことも明らかである。ECMは同一成分で形成されていても全く構造・物性のことなる組織を構築する。例えば,コラーゲンは同一のType Ⅰであっても靱帯・腱や真皮とでは繊維化構造が大きく異なるため物性・力学的強度が全く異なり,その組織の機能を特徴づけている。このようなリガンドとしての存在だけではないECMの機能も含めて生体外環境に復元することは容易ではない。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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