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文献詳細

雑誌文献

生体の科学59巻3号

2008年06月発行

文献概要

特集 アディポゲネシス

脂肪細胞の分化におけるカルパインの役割

著者: 矢島由紀子1 佐藤眞友美2

所属機関: 1東京都臨床医学総合研究所ゲノム動態プロジェクト 2東京都臨床医学総合研究所がん治療プロジェクト

ページ範囲:P.181 - P.188

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 プロテアーゼは生体の要求に対応してタイミングよく速やかに特定の標的タンパク質を抹消し,また非特異的に細胞の構成タンパク成分を分解して,生体反応の進行,維持,調節に作用するきわめて重要な細胞内モジュレーターである。それゆえに,プロテアーゼ系の制御破綻は様々な疾患をもたらす。しかし,その分子機構はいまだ明確にされていない。Ca2+要求性のプロテアーゼ,カルパインは種々の細胞内機能,細胞増殖,分化に関与することが報告されている1)。例えば,ヒトカルパイン3(p94)のプロテアーゼ活性の喪失が肢帯型筋ジストロフィー症2A型の発症をもたらすことや,2型糖尿病の発症に関わる原因遺伝子の一つとしてカルパイン10が報告されている3)

 カルパイン(EC3.4.22.17,clan CA family C2)はバクテリアから哺乳類までに広範囲に存在し,活性化にCa2+を必要とする細胞内中性システインプロテアーゼである。カルパインは通常,細胞質に不活性型で存在し,Ca2+イオンとリン脂質によって活性化される。その過程は,膜分画へのカルパインの移行によってサブユニットが乖離して活性化される。カルパインが触媒するタンパク質分解は典型的な限定分解であり,その結果,基質タンパク質の活性化や不活性化,もしくは変性が起こる。カルパインのin situ活性はカルパイン濃度,Ca2+濃度,カルパインの細胞内存在様式,そして内在性の阻害因子カルパスタチンによって調節されている。われわれは,カルパインが成体由来と胎児由来の脂肪細胞の分化において,ユニークな役割を果たすことを見出したので紹介する。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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