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文献詳細

雑誌文献

生体の科学59巻3号

2008年06月発行

文献概要

特集 アディポゲネシス

代謝遺伝子TFE3の発現とインスリンシグナリング

著者: 中川嘉1 島野仁2 山田信博2

所属機関: 1筑波大学大学院人間総合科学研究科診断生化学 2筑波大学大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科

ページ範囲:P.189 - P.195

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 インスリンは,筋肉や肝臓では糖を燃やしエネルギーを作り蓄えるといった機能に必要であり,膵臓ランゲルハンス島のβ細胞から分泌され,血糖値の恒常性に機能する。インスリンは肝臓では糖の恒常性に働き,脂肪組織では中性脂肪を合成し蓄積する。また,筋肉ではタンパク質合成に働き,エネルギー代謝の中心的な役割を演じている。インスリン感受性は,メタボリックシンドローム,特に,糖尿病における病態形成においては極めて重要である。インスリンの肝臓におけるエネルギー代謝への関与は大きく,特に糖新生の抑制をはじめとする糖代謝へもたらす影響は大きく血糖値の恒常性に深く関与している。また,肝臓はグルコースの貯蔵についても大きな責任を果たす臓器であり,生体の糖の恒常性に大きな役割を演じている。そのため,肝臓でのインスリンシグナル分子の機能不全がインスリン抵抗性を引き起こし,糖尿病を発症することがよく知られている。

 われわれは最近,インスリンシグナルを調節する転写因子として新たにTFE3を同定した。TFE3はインスリンシグナルの調節因子であるInsulin Receptor Substrate-2(IRS-2)の発現を上昇させ,インスリンシグナルを増強する。また,糖代謝遺伝子の発現を制御することでグルコースからのグリコーゲン合成を制御する。これらの効果からTFE3は血糖値の上昇を抑制し,糖尿病病態を改善する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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