連載講座 中枢神経系におけるモジュレーション・8
GABA受容体によるドーパミン,アセチルコリン受容体媒介行動の変調
著者:
池田弘子1
越川憲明1
所属機関:
1日本大学歯学部薬理学教室
ページ範囲:P.238 - P.241
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ドーパミン神経系は,情動のみならず運動系に深く関与することが知られている。大脳基底核におけるドーパミン神経系の機能減退はパーキンソン病を起こし,逆の機能亢進は口腔ジスキネジアの発現に関与すると考えられている。ドーパミン神経には,黒質から線条体へ投射するものと,腹側被蓋野から側坐核へ投射するものが知られている。これまでに,ラットの片側の側坐核を刺激すると,非刺激側へ向かう旋回行動を発現することが明らかにされている1)。一方,線条体のドーパミン神経系は,その活性のみでは旋回行動を発現しないが,側坐核刺激による旋回行動の方向性を決定する上で重要な役割を果たしていることが報告されている1)。このラットの旋回行動は,ドーパミン神経を始めとする大脳基底核機能を研究する上で,極めて有用な動物モデルでもある。たとえば,片側の側坐核ドーパミン受容体またはアセチルコリン受容体を刺激すると非刺激側へ向かうが,異なるパターンの旋回行動を発現する2)。これまでに,この旋回行動モデルを用い,ドーパミン受容体やアセチルコリン受容体の役割について検討がなされてきている。
γ-アミノ酪酸(GABA)は抑制性の神経伝達物質として知られ,様々な神経伝達系を抑制的に調節していることが示されている。側坐核においてもドーパミン神経あるいはアセチルコリン神経の機能を抑制的に調節している。そこで本稿では,ラットのドーパミンおよびアセチルコリン受容体の刺激で誘発する行動のうち,特に旋回行動における側坐核GABA受容体の果たす役割を中心に述べる。