文献詳細
解説
文献概要
AMP-activated protein(AMP)キナーゼは,以前より肝臓や骨格筋などにおいて細胞内のエネルギーセンサーとして作用していることが報告されていた。AMPキナーゼは細胞内のATPが減少しAMPが増加してくると活性化されるセリン/スレオニンキナーゼであり,ATPを消費するような同化作用,例えば脂肪合成やコレステロール合成,タンパク合成,糖新生などを抑制し,逆にATP産生を増加させるような異化作用,解糖系や脂肪酸酸化などを促進させる。最近,AMPキナーゼは単に細胞のエネルギーセンサーとして作用しているだけでなく,視床下部において個体のエネルギーセンサーとしても作用し,摂食やエネルギー代謝を調節していることがわかってきた。視床下部AMPキナーゼ活性は絶食によって上昇し,摂食後に低下する。さらに,アデノウイルスベクターを用いてAMPキナーゼ恒常活性型変異を視床下部に特異的に発現させると摂食量と体重が増加し,逆にAMPキナーゼの不活性型変異を発現させると摂食量と体重が減少することから,視床下部AMPキナーゼは生体のエネルギー状態をモニターし,摂食行動を調節していることが明らかとなった1)。実際,視床下部AMPキナーゼを活性化させる栄養素や薬物,ホルモンはいずれも摂食を促進し,逆にAMPキナーゼ活性を低下させるような薬物やホルモンは摂食を抑制することが複数の研究より報告されている2-5)。本稿では,視床下部におけるAMPキナーゼの摂食やエネルギー代謝における役割とその調節機構についてわれわれの知見を中心に概説したい。
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