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特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008 1.細胞生物学
脂質ラフト
著者: 藤本豊士1 藤田秋一1
所属機関: 1名古屋大学大学院医学系研究科分子細胞学分野
ページ範囲:P.334 - P.335
文献購入ページに移動 脂質ラフト(lipid raft)は,細胞内輸送の機構を説明するために,20年以上前にKai Simonsらによって存在が仮定された分子集合である。極性を持つ上皮細胞では,スフィンゴ糖脂質やGPI結合型蛋白質などの分子は,側・基底部に比べて頂部細胞膜に数倍以上の密度で存在する。Simonsらは,コレステロール存在下ではそれらの分子がゴルジ体の膜外葉(内腔葉)で筏(ラフト)のように集まり,その集合が頂部細胞膜への輸送に重要であるという説を提出した1)。数年ののち,BrownとRoseは,ラフトの成分が界面活性剤に対して不溶性であり,蔗糖密度勾配遠心で得られる軽い膜画分(界面活性剤不溶性膜detergent-resistant membrane=DRM)に濃縮されることを見出した2)。同じ画分にはシグナル伝達に関与する多くの分子も高度に濃縮されていた。膜内葉にアンカーする三量体G蛋白質,Srcファミリー遺伝子産物,Ras,いくつかの膜貫通型の受容体などである。
この報告をきっかけにして,ラフトは細胞表面でのシグナル伝達に関連する分子が集中する膜ミクロドメインであり,クロストークや制御が行われる場であるという考えが一気に拡がった。また上記の報告以来,膜外葉の分子集合として想定されたラフトの概念は膜の両葉にまたがる構造に拡張されることになった。なお,DRMにはカベオリンの構成蛋白質であるcaveolin-1,2,3も濃縮していたため,当初はDRMがカベオラそのものであるという主張もあったが,この説は明確に否定されている。カベオラはDRMに含まれるが,その一部に過ぎない。
この報告をきっかけにして,ラフトは細胞表面でのシグナル伝達に関連する分子が集中する膜ミクロドメインであり,クロストークや制御が行われる場であるという考えが一気に拡がった。また上記の報告以来,膜外葉の分子集合として想定されたラフトの概念は膜の両葉にまたがる構造に拡張されることになった。なお,DRMにはカベオリンの構成蛋白質であるcaveolin-1,2,3も濃縮していたため,当初はDRMがカベオラそのものであるという主張もあったが,この説は明確に否定されている。カベオラはDRMに含まれるが,その一部に過ぎない。
参考文献
387:569, 1997
68:533, 1992
9:7, 2007
7:456, 2006
177:731, 2007
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