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特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008 2.分子生物・遺伝学・遺伝子工学
ncRNA(noncoding RNA)
著者: 廣瀬哲郎1
所属機関: 1産業技術総合研究所バイオメディシナル情報研究センター機能性RNA工学チーム
ページ範囲:P.376 - P.377
文献購入ページに移動 分子生物学のセントラルドグマには,蛋白質合成に専心するmRNA,tRNA,rRNAが登場する。かつてncRNAという言葉は,1980年代以降に新しく見出された核内低分子RNAや核小体低分子RNAなどを総称して例外的な意味合いで用いられてきた。ところが世紀を超えると事態は一変する。まず多数のマイクロRNAが重要な生理機能を果たすことが発見され,機能性RNAとしてのncRNAの重要性に注目が集まってきた。さらに大規模トランスクリプトーム解析によって,ヒトやマウスのゲノムからは数万種類にも及ぶ蛋白質をコードしない転写物が産生されていることが明らかにされた。特に最近の包括的解析によると,ヒトゲノムの98%が何らかのRNAに転写されているという驚くべき報告もある1)。興味深いことに,ゲノム全体あたりのncRNA転写領域の割合は,生物が複雑になるに従って著しく増大する傾向があることも指摘されている。こうしたことから,ncRNAには生物の複雑性の規定を含めた様々な制御機能があると期待されている。
参考文献
447:799-816, 2007
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掲載誌情報