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特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008 2.分子生物・遺伝学・遺伝子工学
生物科学への構成的アプローチ―人工遺伝子回路の構築
著者: 木賀大介1
所属機関: 1東京工業大学大学院総合理工学研究科創発システム講座
ページ範囲:P.382 - P.383
文献購入ページに移動 近年,生命システムの階層性に着目し,生体分子を組み合わせて新たなシステムを構築する構成的アプローチを実験の手段とする,合成生物学の展開が進んでいる。一例としてタンパク質合成システムが非天然アミノ酸を扱えるように遺伝暗号を拡張した研究が挙げられるが1),本稿では,人工的な遺伝子ネットワークの構築に焦点をあてる。例えば,抗マラリヤ薬前駆体の酵母での大量合成が,複数の外来性酵素を導入し,この酵素基質の生産量増大ならびに他経路での消費量低下を行うことで達成されている。
遺伝子を組み合わせる合成生物学の進展は,各種のゲノム解析結果の蓄積と,長鎖DNAの人工合成技術の発達という,情報と合成技術両面の進歩に支えられている。DNAの合成は酵素を使用せずとも,有機化学によっても可能であるが,実用的には100ヌクレオチド程度が有機合成する長さの限界である。ただし,化学合成DNAを酵素を使用して組み合わせることでタンパク質コード配列を合成することも従来より可能であった。最近になって化学合成DNA多品種同時合成技術と誤り訂正技術が開発された結果,2008年にはMycoplasma genitalium のゲノムが,オリジナルのゲノムDNA分子に依存せず,化学合成DNAを組み合わせることで合成されている2)。この技術を使用すれば,複数種類の生物由来のタンパク質コード配列を個体内に集積することも,開発者の名前を人工ゲノムに書き込むことも自由自在である。
遺伝子を組み合わせる合成生物学の進展は,各種のゲノム解析結果の蓄積と,長鎖DNAの人工合成技術の発達という,情報と合成技術両面の進歩に支えられている。DNAの合成は酵素を使用せずとも,有機化学によっても可能であるが,実用的には100ヌクレオチド程度が有機合成する長さの限界である。ただし,化学合成DNAを酵素を使用して組み合わせることでタンパク質コード配列を合成することも従来より可能であった。最近になって化学合成DNA多品種同時合成技術と誤り訂正技術が開発された結果,2008年には
参考文献
99:9715, 2002
319:1215, 2008
403:335, 2000
1:64, 2007
(in press)
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