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文献詳細

雑誌文献

生体の科学59巻5号

2008年10月発行

文献概要

特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008 3.発生・分化・老化・再生医学

哺乳類の個体発生とゲノムインプリンティング

著者: 石野史敏1

所属機関: 1東京医科歯科大学難治疾患研究所

ページ範囲:P.408 - P.409

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●なぜゲノムインプリンティング機構が哺乳類に存在するのか

 哺乳類にはゲノムインプリンティングという“親由来の情報に基づいて一群の遺伝子を片親性発現させる特殊な機構”が存在している。この機構に制御される片親性発現遺伝子(インプリント遺伝子とよぶ)は,全遺伝子の1%にも満たないが,個体発生や成長に必須な遺伝子として機能するものを含む。このため,哺乳類の個体発生には父親・母親由来の両方のゲノムの関与が必須であり,実験的に作製した雌性単為発生胚および雄性発生胚はどちらも,母親の子宮に着床した後に致死(初期胚致死)となる1,2)

 通常,2倍体の生物ではどちらの親から伝わっても遺伝子は同等に発現する。このため片側の遺伝子に生じた変異も,劣性であればその個体の発生に影響しない。これは2倍体の生物にとって大きな利点である。そのように考えると個体発生に必須な遺伝子を片親性発現させるような“生物にとって一見不利に見える機構”が,生物進化の中で哺乳類に生じ,現在でも広く種間に保存されていることは大きな謎である。

参考文献

308:548-550, 1984.
37:179-183, 1984
(Review) 133:699, 2003
113:24, 2006
129:1807, 2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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