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特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008 4.シグナル伝達系
細胞骨格,細胞運動,細胞極性を制御するシグナル伝達機構
著者: 栗田宗一1 水野健作1
所属機関: 1東北大学大学院生命科学研究科情報伝達分子解析分野
ページ範囲:P.420 - P.421
文献購入ページに移動RhoAはストレスファイバーを,Racはラメリポディアを,Cdc42はフィロポディアを,それぞれの標的蛋白質を介して誘導する2,3)。RhoAはROCKやmDiaなどを活性化する。Ser/ThrキナーゼであるROCKは多くの標的蛋白質をリン酸化する。ROCKはミオシン軽鎖ホスファターゼの結合サブユニットのリン酸化・不活性化を介して,ミオシン軽鎖のリン酸化を亢進させる。また,ROCKはLIMキナーゼをリン酸化して活性化し,アクチン脱重合因子コフィリンのリン酸化・不活性化を促進する。RhoAによって活性化されたforminファミリー蛋白質mDiaはアクチンの新規重合を促進する。これらの結果として,ミオシン-アクチン相互作用およびアクチン線維の重合が促進され,ストレスファイバーが形成される。RacおよびCdc42はWASPファミリー蛋白質のWAVE,N-WASPを介してArp2/3複合体を活性化し,新規のアクチン重合を誘起する4)。Arp2/3複合体はアクチンの重合核として機能するとともに,アクチン線維の側面に結合し,ラメリポディアに特徴的な枝分かれしたアクチン線維からなる網目構造を形成する。フィロポディア内のアクチン線維は網目状ではなく直線状に束ねられた形態をとっているが,これにはアクチン束化蛋白質や,枝分かれのないアクチン線維の重合を誘導するforminファミリー蛋白質などの関与が考えられている。
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