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文献詳細

雑誌文献

生体の科学59巻5号

2008年10月発行

文献概要

特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008 5.神経科学

条件反射

著者: 久我奈穂子1 池谷裕二1

所属機関: 1東京大学大学院薬学系研究科薬品作用学教室

ページ範囲:P.434 - P.435

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 肉片を見せられたイヌは唾液を分泌するが,これに先行してベルを聞かせると,やがてベルの刺激だけで唾液を出すようになる―「Pavlovの条件反射」はとりわけ人口に膾炙した生理現象の一つである。ある特定の応答反射(unconditioned response;UR)を無条件に引き起こすことができる刺激(unconditioned stimulus;US)に先行し,それ自体では生理的な反応を引き起こすことはないニュートラルな刺激(conditioned stimulus;CS)を与え,CS-USをペアとして繰り返し提示することで,CSを与えるだけでURに類似した条件応答(conditioned response;CR)が引き起こされるようになる。これを古典的条件付けといい,連合学習の基本的な形態である。

 古典的条件付けの一つである瞬目反射条件付け(eyeblink conditioning)では,CSとして音や光,USとして角膜へのair puffや眼輪筋への電気刺激を用いる。初めはCSに無反応でUSを与えた時のみ𥇥を閉じる(瞬目する)が,CSとUSを時間的に近接させ繰り返し提示すると,CSの提示のみで条件反射(CR)として𥇥を閉じるようになる。学習にはUSに対するCSの先行が必須で,CSとUSの時間間隔が不適切な場合にも学習は困難となる。また,CSとUSの時間間隔を変えるとCR発現のタイミングも変化することから,被験動物(あるいは被験者)はCSとUSの因果関係と共に,時間間隔も学習しているといえる。

参考文献

31:105-112, 2008
10:427-455, 2003
84(3):631-652, 2005
110:13-24, 2000
26(52):13437-13442, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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