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文献概要
特集 mTORをめぐるシグナルタンパク
TSC2ノックアウトマウス
著者: 小柳真希1 木戸良明1 春日雅人2
所属機関: 1神戸大学医学部糖尿病代謝内分泌内科学 2国立国際医療センター研究所
ページ範囲:P.490 - P.496
文献購入ページに移動結節性硬化症(Tuberous Sclerosis)は常染色体優性の遺伝形式をとり,おおよそ6000人から10000人に1人の割合で発症する難治性疾患である。腎臓・皮膚・神経・心臓・肺・生殖組織などのさまざまな組織に過誤腫が発生し,顔面の血管線維腫・痙攣・知能低下を三主徴として幼少時に発症する。
結節性硬化症の原因遺伝子としてTSC1とTSC2が同定されている。9番染色体長腕(9q34)に座位するTSC1は130kDaのHamartin(ハマルチン)1),16番染色体短腕(16p13)に座位するTSC2は200kDaのTuberin(チュベリン)2)をそれぞれコードしている。TSC1とTSC2はそれぞれのカルボキシ(C)末端領域を介して結合し,複合体を形成することで安定化し,癌抑制遺伝子として機能している3)。ショウジョウバエを用いた研究では,TSC1,TSC2いずれかに変異を加えると,細胞サイズが増大することが示されており,細胞増殖・細胞サイズ制御の重要な分子であることが示唆された4)。これまでの分子生物学的研究により,TSC1-TSC2複合体が細胞増殖を負に制御していることや5),インスリンシグナルによりこの複合体が解離することで細胞成長を促進すること6)などが明らかとなってきた。結節性硬化症患者ではTSC1,TSC2いずれかの遺伝子に変異が生じ,タンパクが正常に機能しなくなることで腫瘍が形成される5)。
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