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文献詳細

雑誌文献

生体の科学59巻6号

2008年12月発行

特集 mTORをめぐるシグナルタンパク

胃がん腹膜播種成立におけるmTORシグナル伝達経路

著者: 小泉桂一1 橋本伊佐也2 櫻井宏明1 済木育夫1

所属機関: 1富山大学和漢医薬学総合研究所病態生化学 2富山大学第二外科

ページ範囲:P.528 - P.534

文献概要

 がん細胞が原発部位と異なる遠隔臓器に転移巣を形成するためには,1)原発部位におけるがん細胞の増殖と発現形質の多様化,2)原発腫瘍からのがん細胞の離脱と周辺組織への浸潤,3)脈管内への侵入,4)脈管内での移動とがん細胞と宿主免疫細胞との相互作用,5)転移先の標的臓器の脈管内へのがん細胞の着床,6)脈管外への脱出,7)転移先組織への浸潤と増殖,といった転移カスケードと呼ばれる複雑な過程を経なければならない(図1)。これまでに,これらのステップを制御する分子が数多く報告されてきている1)

 近年,細胞の大きさを制御するmTOR(mammalian target of rapamycin)ががん細胞の増殖を,また,リンパ球の体内動態を制御するケモカインががん細胞の移動を制御し得ることが明らかとなってきた。現在,mTOR阻害剤であるRapamycinに関しては,主に腎がんを対照とした治療が開始されており2),ケモカインに関しては,これらの阻害剤や中和抗体が今後のがん治療の選択肢に加わってくると考えられる。

 本稿では,がん転移制御分子としてのこれら「mTOR」と「ケモカイン」との接点を,われわれの最近の知見を基に考察してみたい。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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