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特集 mTORをめぐるシグナルタンパク
子宮癌の治療ターゲットとしてのPI3K-mTOR経路
著者: 水本泰成1 京哲1
所属機関: 1金沢大学大学院医学系研究科産婦人科
ページ範囲:P.535 - P.540
文献購入ページに移動これまでは子宮癌の多くは頸癌であったが,最近わが国では子宮内膜癌が激増している。日本産婦人科学会に登録された265施設の報告では,2006年度は4381名が罹患し,子宮頸癌とほぼ同様の頻度を示す1)。子宮内膜癌の63%,8.3%がそれぞれ臨床進行期Ⅰ期,Ⅱ期で,その多くが手術療法単独あるいは手術療法+放射線療法にて根治可能である。しかし,進行癌や再発癌に対して行われている放射線療法,化学療法,ホルモン療法の奏功率は10-20%と低く,生存期間の中央値はおおむね1年程度とする報告が多い。したがって,子宮内膜癌発症,進展の分子機構の解明および治療法の開発は子宮内膜癌治療成績の向上に必須である。子宮内膜癌において,PTEN遺伝子異常が高頻度に認められ,PI3K-Akt経路がその発生に関与するとする可能性が指摘されている。そこで,本稿では子宮内膜癌の分子生物学的特徴を概説するとともに,PI3K-mTOR経路をターゲットとした治療戦略の持つ可能性につき言及する。
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