icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学59巻6号

2008年12月発行

文献概要

特集 mTORをめぐるシグナルタンパク

子宮癌の治療ターゲットとしてのPI3K-mTOR経路

著者: 水本泰成1 京哲1

所属機関: 1金沢大学大学院医学系研究科産婦人科

ページ範囲:P.535 - P.540

文献購入ページに移動
 上皮性の子宮癌は子宮頸癌と子宮内膜癌(子宮体癌)に大別されるが,各々の発生機序は全く異なる。子宮頸癌はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により子宮頸部異形成から進展して起こる。HPV以外の発癌因子については確定的なものは見出されていないが,様々な遺伝子や染色体の異常が報告されている。しかしながら,PI3K-Akt-mTORの経路の関与を示す成績は現在までに得られていない。

 これまでは子宮癌の多くは頸癌であったが,最近わが国では子宮内膜癌が激増している。日本産婦人科学会に登録された265施設の報告では,2006年度は4381名が罹患し,子宮頸癌とほぼ同様の頻度を示す1)。子宮内膜癌の63%,8.3%がそれぞれ臨床進行期Ⅰ期,Ⅱ期で,その多くが手術療法単独あるいは手術療法+放射線療法にて根治可能である。しかし,進行癌や再発癌に対して行われている放射線療法,化学療法,ホルモン療法の奏功率は10-20%と低く,生存期間の中央値はおおむね1年程度とする報告が多い。したがって,子宮内膜癌発症,進展の分子機構の解明および治療法の開発は子宮内膜癌治療成績の向上に必須である。子宮内膜癌において,PTEN遺伝子異常が高頻度に認められ,PI3K-Akt経路がその発生に関与するとする可能性が指摘されている。そこで,本稿では子宮内膜癌の分子生物学的特徴を概説するとともに,PI3K-mTOR経路をターゲットとした治療戦略の持つ可能性につき言及する。

参考文献

1)日本産婦人科学会雑誌 60:1034-1051,2008
24:4783-4791, 2006
3)Risinge JI, Berchuck A, Kohler MF et al:53:5100-5103, 1993
9:1163-1166, 1994
56:4483-4486, 1996
113:576-582, 2000
100:5908-5913, 2003
342:69-77, 2000
17:2413-2417, 1998
58:3254-3258, 1998
155:1767-1772, 1999
22:2352-2360, 2003
124:89-96, 2005
92:924-930, 2000
158:2097-2106, 2001
61:4569-4575, 2001
65:10669-10673, 2005
60:3605-3611, 2000
85:119-126, 1999
88:814-824, 2000
53:1906-1910, 1993
13:1066-1071, 2000
59:3346-3351, 1999
58:3526-3528, 1998
58:1344-1347, 1998
27:370-375, 1996
41:1-16, 1991
85:2334-2338, 2000
92:1008-1013, 2004
273:14424-14429, 1998
46:249-279, 2006
25:209-226, 2007
23:3189-3199, 2004
25, 2007
98:1881-1888, 2007
163:2259-2269, 2003
25:5673-5682, 2006
2(8):789-795, 2003
62(21):6141-6145, 2002
10(20):7031-7042, 2004
120(6):747-759, 2005
15:411, 2005
23:3003, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら