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バイサルファイトショットガンシーケンス法の開発―全てのシトシンのメチル化状態を解明することを目指して
著者: 三浦史仁1 大力亮1 伊藤隆司1
所属機関: 1東京大学大学院新領域創成科学研究科情報生命科学専攻
ページ範囲:P.561 - P.570
文献購入ページに移動ゲノム上の全てのシトシンのメチル化情報を個々の塩基レベルの解像度で得ようとする要求は,シトシンのメチル化が関わる生命現象の重要性を考えると当然のことである。しかし,BS法によるメチル化解析ではメチル化の頻度情報が重要になり,場合によっては2本鎖ゲノムの両側の鎖をそれぞれ配列決定する必要があり,さらにはさまざまな状態間でその比較をする必要がある。つまり,ゲノムワイドなBS解析を行おうとする場合はゲノムの配列決定以上にリード数が要求されることを覚悟しなければならないのである。これまでは,サンガー法による配列決定に頼る場合は力のある複数の研究室が協力し合わない限り実現が不可能であった4)。しかし,短時間に従来の数桁上回る大量のリードが得られるいわゆる次世代シーケンサの登場でBS法によるショットガンシーケンシング(BSS)法の実現が可能となってきた。すでにシロイヌナズナではBSS法によりゲノム全体のメチル化状態を解析した報告がなされており5,6),マウスでは特定の長さの制限酵素断片だけを対象としたBSSによる解析結果が報告されている7)。われわれも独自にBSS法のプロトコールを考案し,アカパンカビをモデルにそのデータの有効性を確認してきた。本稿では,既存のBSS法で使用されている鋳型調整法を紹介し,その問題点を議論したうえで,われわれが現在開発中の新しい鋳型調整法を紹介する。
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